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さて、私は一休みするために、立ち停まって、手や顔にいっぱい刺さっている矢を引き抜きました。前に小人からつけてもらった、矢の妙薬を、その傷あとに塗り込みました。それから、眼鏡をはずして、潮が退くのをしばらく待ち、やがて荷物を引きながら、海峡の真ん中を渡り、無事に、リリパットの港へ帰り着いたのです。海岸では、皇帝も廷臣も、みんなが、私の戻って来るのを、今か今かと待っていました。敵の艦隊が大きな半月形を作って進んで来るのは、すぐ見えましたが、私の姿は、胸のところまで水につかっていたので、見分けがつかなかったのです。私が海峡の真ん中まで来ると、首だけしか水の上には出ていなかったので、彼等はしきりに気をもんでいました。皇帝などは、もう私は溺れて死んだのだろう、そして、あれは敵の艦隊がいま押し寄せて来るところだ、と思い込んでいました。けれども、そんな心配はすぐ無用になりました。歩いて行くうちに、だんだんと海は浅くなり、やがて、人声の聞こえるところまで近づいて来たので、私は、艦隊をくくりつけている綱の端を高く持ち上げ、
「リリパット皇帝万歳!」
と叫びました。
--おわり--
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