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私はすっかり、へたばって、もう立っている力もなくなりました。畝と畝との間に横になると、いっそ、このまま死んでしまいたい、と思いました。私は、残してきた妻や子供たちのことが、眼に浮かんできました。みんながとめるのもきかないで、航海に出たのが、今になって無念でした。ふと、私はリリパットのことも思い出しました。あの国の住民たちは、この私を、驚くべき怪物として、尊敬してくれたし、あの国でなら、一艦隊をそっくり引きずって帰ることだってできたのです。だが、ここでは、こんな、とてつもない、大きな連中に会っては、この私はまるで芥子粒みたいなものです。今に誰かこの大きな怪物の一人につかまったら、私は一口にパクリと食われてしまうでしょう。しかし、この世界の果てには、リリパットより、もっと小さな人間だっているかもしれないし、その世界の果てには、今ここにいる大きな人間より、もっともっと大きな人間だっているかもしれないと、私は恐怖で気が遠くなっていながら、こんなことを思いつづけていました。
--おわり--
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