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この船はトンキンに行って、いまイギリスへ帰る途中なのでした。航海は無事にすすみ、1706年6月3日に故国の港に戻りました。そこで、私は船長に別れを告げると、家の方へ向かいました。道々、小さな家や、木や、家畜や、人間などを見ると、なにかリリパットへでも来たような気がします。行き会う人ごとに、なんだか踏みつけそうな気がして、私は、
「退け! 退け。」
とどなりつけました。
私の家へ帰ってみると、召し使いの一人が戸を開けてくれましたが、私はなんだか頭をぶつけそうな気がして、身体をかがめて入りました。妻が飛んでやって来ましたが、私は彼女の膝より低くかがんでしまいました。娘もそばへやって来ましたが、なにしろ長い間、大きなものばかり見なれた眼には、ヒョイと片手で娘をつかんで持ち上げたいような気がしました。召し使いや友人たちも、みんな私には小人のように思えるのでした。こういう有様ですから、はじめ人々は、私を気が違ったものと思いました。しかし間もなく、私もここに馴れて、家族とも友人とも、お互にわかり合うことができました。
--おわり--
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