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こういう奴等と顔を見合って暮らすとしたら、俺でも奴等を首にして一緒に暮らすことを選ぶだろうさ、と思うのでした。けれども彼は女の欲望にキリがないので、そのことにも退屈していたのでした。女の欲望は、いわば常にキリもなく空を直線に飛びつづけている鳥のようなものでした。休むひまなく常に直線に飛びつづけているのです。その鳥は疲れません。常に爽快に風をきり、スイスイと小気味よく無限に飛びつづけているのでした。
けれども彼はただの鳥でした。枝から枝を飛び回り、たまに谷を渡るぐらいがせいぜいで、枝にとまってうたたねしている梟にも似ていました。彼は敏捷でした。全身がよく動き、よく歩き、動作は生き生きしていました。彼の心はしかし尻の重たい鳥なのでした。彼は無限に直線に飛ぶことなどは思いもよらないのです。
--おわり--
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