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髪の毛を前へおろして、糊の寝た浴衣を着、暑いのに黒足袋をはいていた。にこにこして立っているのを、先ほどの男が椅子を持って来て座らせた。印度人はひどいやつであった。
握手をしようと言って男の前へ手を出す。男はためらっていたが思い切って手を出した。すると印度人は自分の手を引き込めて、観客の方を向き、その男の手振りを醜く真似て見せ、首根っ子を縮めて、嘲笑って見せた。毒々しいものだった。男は印度人の方を見、自分の元いた席の方を見て、危なげに笑っている。なにかわけのありそうな笑い方だった。子供か女房かがいるのじゃないか。堪らない。と峻は思った。
握手が失敬になり、印度人の悪ふざけはますます性がわるくなった。見物はそのたびに笑った。そして手品がはじまった。
紐があったのは、切ってもつながっているという手品。金属の瓶があったのは、いくらでも水が出るという手品。
--おわり--
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