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要するに天皇制というものも武士道と同種のもので、女心は変わりやすいから「節婦は二夫にまみえず」という、禁止自体は非人間的、反人性的であるけれども、洞察の真理において人間的であることと同様に、天皇制自体は真理ではなく、また自然でもないが、そこに至る歴史的な発見や洞察において軽々しく否定しがたい深刻な意味を含んでおり、ただ表面的な真理や自然法則だけでは割り切れない。まったく美しいものを美しいままで終わらせたいなどと願うことは小さな人情で、私の姪の場合にしたところで、自殺などせず生きぬきそして地獄に堕ちて暗黒の荒野をさまようことを願うべきであるかも知れぬ。現に私自身が自分に課した文学の道とはかかる荒野の流浪であるが、それにも拘わらず美しいものを美しいままで終わらせたいという小さな願いを消し去るわけにも行かぬ。
--おわり--
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