舞踏会殺人事件 60/63 (坂口安吾)
416 0 0 00:00
文字数 入力 誤字
この場所に読みがなや入力のヒントが表示されます
多数の方々はお嬢さまが卒倒なさったのをある人の差し金で定められた時刻のようにお考えのようでしたが、この時刻はお嬢さまが勝手に選んだもので偶然にすぎません。ある人の差し金で定められた時刻とは、加納さんが幽霊から使いをもらって夕月へひきだされ、どうしても、会におくれて帰邸せざるを得なかったというカラクリにあるのです。これは加納さんの性癖をよく知りつくせる者のみのなしうることです。つまり、加納さんは重大な宴会前には食事して出席すること、いそいで食事するときには、茶漬けに梅干しだけで二三分でかっこむことを知りぬいた者のたくらんだことです。なぜなら、犯人は加納さんに大急ぎで梅干しをたべさせる必要がありました。その梅干しに毒が仕込んであったからです」
 虎之介は大不満。鼻をならして、
「そんなことがありますかい。お嬢さんが卒倒して、そっちへ人々の注意がむいた隙をねらって小柄をぶちこんだのさ。その隙がなくっちゃ小柄をぶちこめるものですか」
--おわり--