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自分がいくらかは人間の力ではどうにもできない境遇の奴隷であったということを、私は世の人々に信じてもらいたいのだ。これから語ろうとする詳しい話のなかで、私のために、広漠とした罪過の砂漠のなかにいくつかの小さな宿命のオアシスを、捜し出してもらいたいのだ。以前にもこれほど大きな誘惑物は存在したではあろう。が、しかし、少なくともこんなふうに人間が誘惑されたことは前には決してなかった――たしかに、こんなふうに落ちこんだことは決してなかった――ということを認めてもらいたいのだ。――これは誰でも認めずにはいられないことであるが。とすると、こんなふうに苦しんだ人間はいままでに一人もなかったのであろうか? 実際、自分は夢のなかに生きてきたのではなかろうか? そして自分はいま、この世のあらゆる幻影のなかでももっとも怪奇なものの、恐怖と神秘との犠牲として死んでゆくのではなかろうか?--おわり--
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