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いちは長太郎の床のそばへ行ってささやいた。「まだ早いから、お前は寝ておいで。ねえさんたちは、おとっさんのだいじな御用で、そっと行って来る所があるのだからね。」「そんならおいらもゆく」と言って、長太郎はむっくり起き上がった。
いちは言った。「じゃあ、お起き、着物を着せてあげよう。長さんは小さくても男だから、いっしょに行ってくれれば、そのほうがいいのよ」と言った。
女房は夢のようにあたりの騒がしいのを聞いて、少し不安になって寝がえりをしたが、目はさめなかった。
三人の子供がそっと家を抜け出したのは、二番鶏の鳴くころであった。戸の外は霜の暁であった。提灯を持って、拍子木をたたいて来る夜回りのじいさんに、お奉行様の所へはどう行ったらゆかれようと、いちがたずねた。じいさんは親切な、物わかりのいい人で、子供の話をまじめに聞いて、月番の西奉行所のある所を、丁寧に教えてくれた。
--おわり--
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