モルグ街の殺人 91/92 (ポー作,佐々木直次郎訳)
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階段の上で人々の聞いた言葉というのは、オランウータンの悪鬼のような声とまじった、そのフランス人の恐怖と驚愕との叫び声であったのだ。
 もうこの上につけ加えることはほとんどない。オランウータンは、扉がうち破られるすぐ前に、避雷針を伝って部屋から逃げ出したにちがいない。窓はそこから出るときにしめて行ったのだろう。その後、オランウータンは持ち主自身に捕らえられ、植物園に非常な大金で売られた。ル・ボンは、我々が警視庁へ行って(デュパンの多少の注釈とともに)事情を述べると、すぐに釈放された。警視総監は、私の友に好意を持っていたけれども、事件のこの転回を見て自分の口惜しさをまったく隠しきれなくて、人はみんな自分自分のことをかまっていればいいものだ、というような嫌みを一つ二つ言うよりほかにしようがなかった。
--おわり--