▲ | 351 | 0 | 0 | 00:00 | ▼ |
文字数 | 入力 | 誤字 |
わたしはやはり地獄の底へ、御両親の跡を追って参りましょう。どうかお父様やお母様は、ぜすす様やまりや様の御側へお出でなすって下さいまし。その代わりおん教えを捨てた上は、わたしも生きてはおられません。……」おぎんは切れ切れにそう言ってから、後は啜り泣きに沈んでしまった。すると今度はじょあんなおすみも、足に踏んだ薪の上へ、ほろほろ涙を落とし出した。これからはらいそへはいろうとするのに、用もない嘆きに耽っているのは、勿論宗徒のすべき事ではない。じょあん孫七は、苦々しそうに隣の妻を振り返りながら、かん高い声に叱りつけた。
「お前も悪魔に見入られたのか? 天主のおん教えを捨てたければ、勝手にお前だけ捨てるが好い。おれは一人でも焼け死んで見せるぞ。」
「いえ、わたしもお供を致します。けれどもそれは――それは」
--おわり--
▲ | ▼ |