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「それでもう、女はほんとうに私のものになり切ってしまったのです。ちっとも心配はいらないのです。キッスのしたい時にキッスが出来ます。抱きしめたい時には抱きしめることも出来ます。私はもう、これで本望ですよ」「……だがね、用心しないと危ない。私は人殺しなんだからね。いつ巡査に見つかるかしれない。そこで、俺はうまいことを考えてあったのだよ。隠し場所をね。……巡査だろうが刑事だろうが、こいつにはお気がつくまい。ホラ、君、見てごらん。その死骸はちゃんと俺の店先に飾ってあるのだよ」
男の目が私を見た。私はハッとして後ろを振り向いた。今の今まで気のつかなかったすぐ鼻の先に、白いズックの日覆い……「ドラッグ」……「請け合い薬」……見覚えのある丸ゴシックの書体、そして、その奥のガラス張りの中の人体模型、その男は、何々ドラッグという商号を持った、薬屋の主人であった。
--おわり--
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