おおかたこれは弟子が居すくまる拍子に、そこにあった壺をひっくり返して、その中の蛇が這い出したのを、みみずくがなまじいに掴みかかろうとしたばかりに、とうとうこういう大騒ぎが始まったのでございましょう。二人の弟子は互いに眼と眼とを見合わせて、しばらくはただ、この不思議な光景をぼんやり眺めておりましたが、やがて師匠に黙礼をして、こそこそ部屋へ引き下がってしまいました。蛇とみみずくとがその後どうなったか、それは誰も知っているものはございません。――
　こういう類いの事は、そのほかまだ、いくつとなくございました。前には申し落としましたが、地獄変の屏風を描けという御沙汰があったのは、秋の初めでございますから、それ以来冬の末まで、良秀の弟子たちは、絶えず師匠の怪しげな振る舞いに脅かされていた訳でございます。
--おわり--