狼王ロボ 5/26 (シートン作,薄田斬雲訳)
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毒殺の計

 翌日から私は地形を見にまわった。なるほどカランポーの谷は、土地の高低があって、川の流れも多く、とても馬や猟犬で狼を追いまわせそうもないところだ。
「毒か、ワナを用いるほかない。」と、私は友に語ったのだが、大きいワナは持って行かなかったので、まず一服毒を盛ることにした。
 私は、若い牝牛の腎臓脂肪へチーズを混ぜ、それを陶器皿に入れてとろ火で煮た。金物の臭いを避けるために、中の骨を小刀がわりに使った。この煮物をさましていくつもの塊に切り、その切り口へあなをあけて、毒薬を詰め、その上へチーズを厚くぬってふたをした。このご馳走をつくるあいだ、私は人間の臭いがつかないように注意して、牛のほふったばかりの温かい血へ浸した手袋をはめ、また私の息がこの餌の肉へふきかからないように、マスクをかけた。
--おわり--