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三![]()
兵十が、赤い井戸のところで、麦をといでいました。
兵十は今まで、おっかあと二人きりで、貧しいくらしをしていたもので、おっかあが死んでしまっては、もう一人ぼっちでした。
「おれと同じ一人ぼっちの兵十か」
こちらの物置の後から見ていたごんは、そう思いました。
ごんは物置のそばをはなれて、向こうへ行きかけますと、どこかで、いわしを売る声がします。
「いわしの安売りだあい。いきのいいいわしだあい」
ごんは、その、いせいのいい声のする方へ走って行きました。と、弥助のおかみさんが、裏戸口から、
「いわしをおくれ。」と言いました。いわし売りは、いわしのかごをつんだ車を、道ばたにおいて、ぴかぴか光るいわしを両手でつかんで、弥助の家の中へもってはいりました。
--おわり--
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