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されば君もし、一の小道を行き、たちまち三条に分かるる所に出たなら困るに及ばない、君の杖を立ててその倒れたほうに行きたまえ。あるいはその路が君を小さな林に導く。林の中ごろに到ってまた二つに分かれたら、その小なる路を選んでみたまえ。あるいはその路が君を妙な所に導く。これは林の奥の古い墓地で苔むす墓が四つ五つ並んでその前にすこしばかりの空き地があって、その横のほうに女郎花など咲いていることもあろう。頭の上の梢で小鳥が鳴いていたら君の幸福である。すぐ引きかえして左の路を進んでみたまえ。たちまち林が尽きて君の前に見わたしの広い野が開ける。足元からすこしだらだら下がりになり萱が一面に生え、尾花の末が日に光っている、萱原の先が畑で、畑の先に背の低い林が一叢繁り、その林の上に遠い杉の小杜が見え、地平線の上に淡々しい雲が集まっていて雲の色にまがいそうな連山がその間にすこしずつ見える。十月小春の日の光のどかに照り、小気味よい風がそよそよと吹く。--おわり--
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