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「そうですよ、そうですとも!」と、湯河は嬉しそうに賛成した。彼はいつの間にか機嫌を直していたのである。
「のみならず、僕はあなたの結婚問題には少なからず同情を寄せております」
紳士は、湯河の嬉しそうな顔をチラと見て、笑いながら言葉を続けた。
「あなたの方へ奥様の籍をお入れなさるのには、奥様と奥様のご実家とが一日も早く和解なさらなけりゃいけませんな。でなければ奥様が二十五歳におなりになるまで、もう三、四年待たなけりゃなりません。しかし、和解なさるには奥様よりも実はあなたを先方へ理解させることが必要なのです。それが何よりも肝心なのです。で、僕もできるだけご尽力はしますが、あなたもまあそのためと思って、僕の質問に腹蔵なく答えていただきましょう」
「ええ、そりゃよく分かっています。ですからなにとぞご遠慮なく、――」
--おわり--
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