グスコーブドリの伝記 30/60 (宮沢賢治)
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 ブドリはそこで思い切って、なるべく足音をたてないように二階にあがって行きますと、階段のつき当たりの扉があいていて、じつに大きな教室が、ブドリのまっ正面にあらわれました。中にはさまざまの服装をした学生がぎっしりです。向こうは大きな黒い壁になっていて、そこにたくさんの白い線が引いてあり、さっきのせいの高いめがねをかけた人が、大きな櫓の形の模型をあちこち指さしながら、さっきのままの高い声で、みんなに説明しておりました。
 ブドリはそれをひと目見ると、ああこれは先生の本に書いてあった歴史の歴史ということの模型だなと思いました。先生は笑いながら、一つの取っ手を回しました。模型はがちっと鳴って奇態な船のような形になりました。またがちっと取っ手を回すと、模型はこんどは大きなむかでのような形に変わりました。
 みんなはしきりに首をかたむけて、どうもわからんというふうにしていましたが、ブドリにはただおもしろかったのです。
「そこでこういう図ができる。」先生は黒い壁へ別のこみいった図をどんどん書きました。
--おわり--