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「直江山城が、北国東国に拠って、内府へ加担の軍を、遠く寄せつけているこの秋に、秀頼公の御教書を乞い、西に毛利、島津を起たせ」「待たれい」
刑部は、三成の語気を、こう鎮めて、
「お身は、山城と、いち早く、脈を引いておられたな。――上杉の挙兵は、お身の策謀か」
と、問いつめた。
三成は、そう問われることを、待っていた。
「そうだ!」
「ふう……む」
「刑部」
「……」
「刑部! こう打ち明けたからには、お許にはぜひこの加担をしてもらわねばならぬ」
「打ち明けた者――それは――この刑部と、誰とに」
「安国寺恵瓊」
「安国寺? ……うむ、毛利輝元を引き入れる手びきにな」
「その方は、たしかに起つ」
「あぶないものよ」
「いや」
「いや、毛利じゃない。この企て、どう案じても、刑部には、勝ち目が考えられんのじゃ……。困ったことをやられたの」
刑部の肋骨が大きく一つ喘いだ、彼のたださえ皮膚の色をしていない皮膚は、友の為に憂いに充ちてしまった。首の根が折れたように、いつまでも、顔を上げないのであった。
--おわり--
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