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ちょうどその時、部屋の中には誰もいなかったのですが、彼女は、何か嬉しいことでもあった様子で、小声で、不思議な歌を歌いながら、躍るような足どりで、そこへ入って参りました。そして、私のひそんでいる肘掛け椅子の前まで来たかと思うと、いきなり、豊満な、それでいて、非常にしなやかな肉体を、私の上へ投げつけました。しかも、彼女は何がおかしいのか、突然アハアハ笑い出し、手足をバタバタさせて、網の中の魚のように、ピチピチとはね回るのでございます。それから、ほとんど半時間ばかりも、彼女は私の膝の上で、時々歌を歌いながら、その歌に調子を合わせでもするように、クネクネと、重い身体を動かしておりました。
これは実に、私にとっては、まるで予期しなかった驚天動地の大事件でございました。女は神聖なもの、いやむしろ怖いものとして、顔を見ることさえ遠慮していた私でございます。
--おわり--
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