ポラーノの広場 16/110 (宮沢賢治)
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 わたくしどもはもう競馬場のまん中を横切ってしまってまっすぐに野原へ行く小さなみちへかかっていました。ふりかえってみると、わたくしの家がかなり小さく黄いろにひかっていました。
「ポラーノの広場へ行けば何があるっていうの?」
 ミーロについて行きながらわたくしはファゼーロにたずねました。
「オーケストラでもお酒でも何でもあるって。ぼくお酒なんか飲みたくはないけれど、みんなを連れて行きたいんだよ。」
「そうだって言ったねえ、わたしも小さいとき、そんなこと聞いたよ。」
「それに第一にね、そこへ行くと誰でも上手に歌えるようになるって。」
「そうそう、そう言った。だけどそんなことがいまでもほんとうにあるかねえ。」
「だって聞こえるんだもの。ぼくは何もいらないけれども上手にうたいたいんだよ。ねえ。ミーロだってそうだろう。」
「うん。」ミーロもうなずきました。
 元来ミーロなんかよほど歌がうまいのだろうとわたくしは思いました。
--おわり--