檸檬 (梶井基次郎) 9分割 | 入力文の数= 9 |
檸檬(れもん)は梶井基次郎の代表作。きっとあなたも、レモンイエローの絵の具をチューブから搾り出して固めたような、檸檬を買いたくなるでしょう
- IA00363 (2019-07-24 評価=3.62)
「檸檬(れもん)」は自分の心境を独特のタッチでつづる梶井基次郎の代表作。――えたいの知れない不吉な塊が私の心を始終おさえつけ、始終私は街から街を浮浪し続けていた - IA00364 (2019-07-24 評価=4.20)
私は路を歩きながら、京都ではなくて別の市を歩いている錯覚を起こそうと努める。錯覚が成功しはじめると、その上のに想像の絵具を塗りつけ、現実の私を見失うのを楽しんだ - IA00365 (2019-07-24 評価=4.00)
私にはまるで金がなかった。だから、二銭や三銭で、贅沢な美しいもの。そう言ったものが私を慰めるのだ。私の好きだった所は、たとえば丸善(当時 書籍、雑貨中心の百貨店) - IA00366 (2019-07-24 評価=4.00)
友人の下宿を転々としていた頃、私は友達が登校すると、街をさまよい出なければならず、ある日私は寺町の果物屋で足をとめた。果物があんな色彩でうず高く積まれていた - IA00367 (2019-07-24 評価=4.00)
寺町通は賑やかな通りだが、この家は夜が美しく、しかも、店頭の周囲だけが妙に暗いのだ。とくに近所の和洋菓子店、鍵屋の二階の窓から見た果物店の眺めは私を興がらせた - IA00368 (2019-07-24 評価=4.00)
その日、店には珍しく檸檬が出ていて、私は一つ買った。私は檸檬が好きだ。レモンエロウの絵具をチューブから搾り出して固めたようなあの単純な色も、紡錘形の格好も - IA00369 (2019-07-24 評価=4.00)
肺尖を悪くしていた私には、その檸檬の冷たさは快いものだった。単純な冷覚や触覚や嗅覚や視覚が私にしっくりした。――つまりはこの重さなんだな―― 私は幸福だったのだ - IA00370 (2019-07-24 評価=4.00)
どこをどう歩いたのか、私は丸善にずかずか入って行った。だが、幸福な感情はだんだん逃げ、憂鬱が立てこめて来た。私は絵を集めた画本の棚の前に行った