江戸時代、弟殺しの罪人喜助が島流しの刑を受けるため高瀬舟で護送された。この男のした事は犯罪なのか? 医師でもある森鴎外が静かに問いかける…
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弟の目は『早くしろ』とでも言うように恨めしそうで、徐々に険しくなって来ます。私がとうとう『抜いてやるぞ』と言うと、目の色は晴れやかに、うれしそうに変わりました - IA01587 (2021-02-19 評価=4.33)
私は剃刀の柄を握って、ずっと引きました。この時表の戸をあけて、留守を頼んでいた近所のばあさんが入って来て、あっと言って、戸をあけ放したまま駆け出してしまいました - IA01588 (2021-02-20 評価=4.33)
抜いた時に、外のほうを切った手ごたえがありました。気がつくと弟は多くの血が出て息が切れていました。その後、年寄衆に連れられて役場に来たのです」と喜助は話した - IA01589 (2021-02-20 評価=4.33)
庄兵衛は喜助の話を条理が立っていると思った。取り調べを何度も受けたせいであろう。だが、これは果たして弟殺し、人殺し、というものだろうか