蘭学の修業後、小石川養生所に赴任した新人医師、保本登。所長赤ひげに不満を持つが…。黒澤明の名作映画「赤ひげ」原作として有名な傑作娯楽小説 第一篇
- IA03724 (2023-09-21 評価=4.00)
登がお杉に、天野源伯と御目見医取り立ての約束がある事、娘ちぐさと破談になった事で、養生所に不満を持っている事を伝えると、お杉は養生所とちぐさは関係ないと反論した - IA03725 (2023-09-22 評価=3.00)
その夜、登がゆみの住居に近い腰掛けに座って、ひょうたんの酒を飲んでいると、お杉が現れた。お杉は、ゆみが薬を飲んで熟睡したから、鍵を掛けて出て来たという - IA03726 (2023-09-22 評価=3.00)
登は、自分が世間にいては面倒だから(天野源伯に)養生所へ閉じ込められた、とお杉に不平をもらした。だがお杉は、去定はいい医者を探したから、あなたが見つかったのだ、と反論する - IA03727 (2023-09-23 評価=3.00)
登は、去定に蘭学の筆記や図録を提出しろ、と言われた話をお杉にした。自分が長崎で苦心して学び会得した業績であり、公開すれば価値を失うので見せたくなかった - IA03728 (2023-09-23 評価=4.00)
だが、結局提出させられた。登がお杉に、それが去定が私を呼んだ理由の一つだ、と話すと、お杉は、酔ってそんなことを言う方は嫌いだ、と登をつきはなした - IA03729 (2023-09-24 評価=5.00)
登はお杉の手をつかんで「おれを嫌いか?」とささやいた。お杉は「酔ってそんなことを言う人は嫌いです」と、登から酒の入ったひょうたんを取りあげて家のほうへ去っていった - IA03730 (2023-09-24 評価=4.00)
■五 登は見習い医になる気はなかった。養生所では通勤する数人の町医には熱意がなく、常勤の新出医長と見習い医二人の三人に、入院患者の治療がほぼ任されていた - IA03731 (2023-09-25 評価=4.00)
病棟は二棟で病室は板張りに薄縁だった。三十余人の患者たちは男女とも、白い筒袖の木綿の着物を与えられており、患者たちからは畳や色のある着物を用いたい、と不平が絶えなかった - IA03732 (2023-09-25 評価=3.00)
これらの不満は去定に向かったが、夜の急病人などには当直の見習い医では十分に対応できない点も不満につながった。ある日、登は森半太夫の手当てに付き添った後、呼び止められた - IA03733 (2023-09-27 評価=5.00)
半太夫は「愚かしい反抗はやめなさい。損をするのはあなた自身ですよ」と登をさとした。だが、登は彼は豪農の二男だから、幕府の施療所や医長を崇敬している、ばかな話だと思った - IA03734 (2023-09-27 評価=4.00)
半太夫は人々に好かれているらしく、お杉も時々褒める。また炊事場のお雪は彼に片想いしているという。登が彼女の話を遮り、ゆみの事を尋ねると、お杉は急に警戒した - IA03735 (2023-09-28 評価=4.00)
登は「私は蘭方の治療法を知っているから、おゆみさんのような珍しい病人に興味があるんだ」と言ったが、お杉は「去定先生以外まじめにおゆみさんを見る方はいません」と信じなかった - IA03736 (2023-09-28 評価=4.00)
■6 登は「症状がわかれば、赤ひげとはべつな治療法に気付くかもしれない」と言ったが、お杉は「酔っている間はだめ。この次に話しましょう」と返事した。登はお杉を抱きしめた - IA03737 (2023-09-29 評価=5.00)
登が唇でお杉の唇をふさぎ抱きしめようとすると、お杉は「そんなことをするあなたは嫌い」と腕をすりぬけた。しばらくお杉と会う機会がなかったが、ある日登は菜園のそばでお杉に会った - IA03738 (2023-09-29 評価=4.00)
お杉は今夜うかがいます、と言ったが声が嗄れていたので、登は喉の楽になる薬を作ってあげると声をかけた。その日登が夕食を食べていると、天野まさをという若い女の来客があった - IA03739 (2023-09-30 評価=4.00)
登は(破談になった)ちぐさの妹に違いないと思ったが、来た理由が推測できず、うっかり会わない方がいいと思った。取次の者に会わないと伝えると、彼女はまた来ると言って帰った - IA03740 (2023-09-30 評価=4.00)
登は、妹娘などよこしてもこんどは騙されはしないぞと思い、酒を飲んでから徳利を持って外に出た。すると、腰掛けに座っていたお杉に呼びとめられ、並んで座った - IA03741 (2023-10-01 評価=5.00)
登が薬袋を渡すと、お杉は礼を言い、お嬢さんの飲むお酒を登のひょうたんに分けて入れて来たという。登は酒を持ってくるなんて珍しい、と言いながらひょうたんを受け取った - IA03742 (2023-10-01 評価=4.00)
■七 登はひょうたんから濃厚な酒を飲んだ。お杉はおゆみについて、去定先生の見立ては違っている、彼女は気違いではないと思う、だからまじめに話を聞いてほしい、と言った - IA03743 (2023-10-02 評価=5.00)
おゆみはお杉の二つ年上で十五歳、母は何らかの事情で家を出たらしく、二人の妹とは母が違う。おゆみは美しく活発で縁談も決まっていたが、情事がらみの災難を経験していた