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美少女 (太宰治) 14分割入力文の数= 14

甲府市に家を借りて住む太宰治。彼は妻が湯治する温泉で美少女を見かけた。当時の混浴温泉風景と少女の様子を描く、気楽に入力できる太宰治の随筆短編

作家や目的で選ぶ

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    404
    IA04287 (2024-10-03 評価=4.00)

    甲府市のはずれに小さい家を借りて半年たったが、家内がアセモに悩まされていた。近くに湯村という温泉があるので、そこへ毎日通わせることにした
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    398
    IA04288 (2024-10-03 評価=4.00)

    家内の話では湯村の大衆浴場は湯がぬるいのが欠点だが、清潔でのんびりしていて、浴客も農村の老人たちで別天地であるという。私も退屈していた時であったから行ってみることにした

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    410
    IA04289 (2024-10-04 評価=5.00)

    たいしたことはなかった。浴場はタイル張りで日光が満ち、小ぶりの湯船には浴客が五人いた。ただ、湯がぬるく寒いので、私は「身動きもできやしない」とぶつぶつ言った
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    402
    IA04290 (2024-10-04 評価=5.00)

    家内が「三十分くらいで汗がでて、効いてきます」と言うので、私は観念した。さて湯槽には二組の家族がいる。老夫婦と、私と対角線の位置にいる七十くらいの老爺ら三人である

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    393
    IA04291 (2024-10-05 評価=4.00)

    後者の三人は、老爺と同じ年恰好の老婆と孫娘らしい少女だが、その少女が素晴らしいのである。16~18であろうか、大柄のからだは青い桃実を思わせた
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    395
    IA04292 (2024-10-05 評価=5.00)

    少女の裸体は美しく崇高なほど立派に思えた。野性的なきつい顔をした少女は、私が直視しても平気であった。三人の様子から彼女は病後らしいと思われたが、痩せてはいない

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    423
    IA04293 (2024-10-07 評価=5.00)

    彼女が私の眼の前を通ると、背の高い少女であることに眼を見張った。彼女がコップで水を幾杯も飲むと、なごやかな雰囲気になった。すると老爺が私に「あんたも飲まんと」と言った
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    406
    IA04294 (2024-10-07 評価=5.00)

    私は胸が貧弱なので病後に思われたのであろう。私はあいそ笑いを浮かべて立ち上がって少女からコップを受け取り、塩からい鉱泉の水を三杯のんだ。家内はくすくす笑っている

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    403
    IA04295 (2024-10-08 評価=5.00)

    少女は元の場所に戻っている。私は他人との世間話が得意でないので「出よう」と家内に囁くと、一人湯槽から出た
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    434
    IA04296 (2024-10-08 評価=4.00)

    家内は老人たちとまだ話をしている。あの少女はよかった。いいものを見た、とこっそり胸の秘密の箱の中に隠しておいた。さて、七月になり、暑熱は極点に達した

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    379
    IA04297 (2024-10-10 評価=3.00)

    私は暑くて散髪しようと思ったが、散髪屋は満員だった。小さな店を覗いたら主人が「すぐ出来ます」と呼びかけてきたので中に入る。私の髪の見苦しさを見抜かれたようだ
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    403
    IA04298 (2024-10-10 評価=3.00)

    主人は四十くらいで丸坊主、ロイド眼鏡をかけた小ざっぱりとした散髪屋である。鏡を見つめていると、奥に花(女性)が写った

  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    426
    IA04299 (2024-10-11 評価=4.00)

    青い服を着た少女が椅子に腰かけ、私の鏡の顔をちょいちょい見ている。私が気にし始めると、私のほうを見なくなった。猫と女は近寄ると逃げ去る、とか
  • エッセイ
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    367
    IA04300 (2024-10-11 評価=4.00)

    私ははっと、素晴らしいからだの病後の少女であることに気付いた。私が不覚にも笑いかけてしまうと、少女は……
     「美少女」太宰治作 昭和14年(1939)