激情にかられ、飼っていた黒猫にひどい仕打ちをしてしまう主人公…。近代推理小説の祖、エドガー・アラン・ポーが描くミステリーホラーの傑作
- IA01475 (2021-01-16 評価=3.86)
私はあす死ぬべき身だから、今日のうちに自分の魂の重荷をおろしておきたい。私の第一の目的は一連の家庭の出来事を人々に示すことだ。私を恐れさせ、破滅させた出来事を… - IA01476 (2021-01-16 評価=3.55)
子供のころから私はおとなしくて情け深い性質で、とりわけ動物が好きで、さまざまな生きものを飼った。彼らに食物をやったり、愛撫するのは楽しかった - IA01477 (2021-01-16 評価=4.00)
妻と私は様々な種類の生きものを飼ったが、その中に猫がいた。大きな美しい黒猫は驚くほど利口で、ローマ神話の冥府(めいふ)の王であるプルートという名だった - IA01478 (2021-01-16 評価=3.87)
猫は数年間は私になついていたが、私は酒癖のため性格が急激に悪く変わってしまった。気難しくなった私は妻に手を振り上げたり、飼っていた生きものを虐待するようになった - IA01479 (2021-01-16 評価=4.16)
ある夜、行きつけの酒場から酔っぱらって帰って来ると、猫が私の手荒さに驚いて私の手に歯で傷をつけた。私は憤怒に我を忘れ、猫をひどく傷つけた - IA01480 (2021-01-17 評価=4.16)
私は自分の犯した罪にたいして恐怖と悔恨の情を感じた。猫の傷は少しずつ回復したが、私をひどく恐れて逃げるようになった。初めはそれを悲しく思っていたのだが…、 - IA01481 (2021-01-17 評価=3.50)
私の心の中にある、天邪鬼(あまのじゃく)の心持ちが最後の破滅を来たした。罪もない動物にたいして、自分の加えた傷害を仕遂げさせようとしたのだ - IA01482 (2021-01-17 評価=4.25)
ある朝、私は涙を流しながら、猫に首輪をはめて縄で木の枝につるした。だが、その残酷な行為の晩に家が火事になり、私と妻と召し使いは逃れたもの、全財産を失った - IA01483 (2021-01-17 評価=3.80)
火事の翌日、私は焼け跡へ行ってみた。壁はほとんど焼け落ちていたが、寝台のヘッドボードのところの壁だけが焼け残っていて、多くの人々が熱心に調べているようだった - IA01484 (2021-01-17 評価=3.80)
壁の白い表面には首の回りに縄のある猫が浮き彫りになっていた。私は驚いたが、誰かが猫を部屋に投げこみ、石灰と火炎と死骸のアンモニアで像が浮かんだに違いないと考えた - IA01485 (2021-01-20 評価=3.80)
幾月もの間、猫の幻像を払うことはできなかったが、いつか猫のいなくなったことを悔やむようになった。そしてある夜、酒場で樽の上にじっとしている黒い物に注意をひかれた - IA01486 (2021-01-20 評価=3.80)
黒猫だった。プルートと異なり胸一面に白い斑点があった。猫は私が目につけた事を喜んでいる様子で、店の主人も始めて見た猫だと言うので、家についてくるままにした - IA01487 (2021-01-20 評価=3.80)
猫は私の家に居つき、妻に気に入られた。猫が私を好いている事はかえって私をいやがらせ、やがて憎しみに変わった。私は嫌悪し、忌むべき存在から逃げ出すようになった - IA01488 (2021-01-20 評価=3.80)
私が憎しみを増した理由は、猫に片眼がなかったからだ。だが猫は私を好いて、足元にうずくまったり、膝の上や足の間でじゃれついたり、爪を着物にひっかけたりした - IA01489 (2021-01-20 評価=4.25)
そんな時は殴り殺したいとも思ったが、差し控えた。猫が怖かったからだ。猫が私に起こさせた恐怖の念は、白い毛の斑点が私に起こさせる、ある妄想により強められた - IA01490 (2021-01-21 評価=4.00)
猫の胸の白い斑点が、ゆっくりと変化し、絞首台の形となったのだ! 私はみじめだった。一匹の畜生が、神をかたどって作られた人間である私に苦痛を与えているのだ - IA01491 (2021-01-21 評価=3.50)
昼は猫が私を一人にせず、夜は恐ろしい夢が私を目覚めさせた。私は気むずかしさがつのり、幾度もとつぜんに起こる激怒の発作に身をまかせていた - IA01492 (2021-01-21 評価=4.25)
ある日、私はささいな事で猫に腹を立て、斧で殺そうとした。だが、私は邪魔をした妻に逆上して、斧を妻の脳天に打ちこんだ。妻は死に、私は慎重に死体を隠すことにした - IA01493 (2021-01-21 評価=4.25)
死骸を細かく切って火で焼くか、穴蔵の床に穴を掘るか、井戸に投げこむか、荷物として持ち出すか。最後に、私は中世紀の僧侶のように、穴蔵の壁に塗りこむことを思いついた - IA01494 (2021-01-21 評価=4.25)
私は壁の煉瓦を取りのけ、死骸を押しこんだ。壁には、同じ色の漆喰を作って念入りに塗ったので、手を加えたような痕跡は見つからなかった