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高瀬舟 (森鴎外) 25分割入力文の数= 25 <<  1  2   >>

江戸時代、弟殺しの罪人喜助が島流しの刑を受けるため高瀬舟で護送された。この男のした事は犯罪なのか? 医師でもある森鴎外が静かに問いかける…

作家や目的で選ぶ

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    305
    IA01566 (2021-02-13 評価=3.66)

    京都の罪人は遠島を申し渡されると、京都町奉行の同心が京都の高瀬川を高瀬舟に乗せて大阪へ護送する。罪人は重罪犯とは言え獰悪(どうあく)な人物が多数だったわけではない
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    278
    IA01567 (2021-02-13 評価=3.75)

    情死をはかって、自分だけ生き残った男なども含まれていた。この舟で罪人と、乗ることを許された親類の者とは身の上を語り合う。同心は罪人の境遇を細かに聞くことができた

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    293
    IA01568 (2021-02-13 評価=3.66)

    うるさいと思う冷淡な同心もいれば、無言のうちにひそかに胸を痛める同心もあった。涙もろい同心は不覚の涙を流すこともあり、高瀬舟の護送は不快な職務として嫌われていた
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    422
    IA01569 (2021-02-14 評価=4.00)

    ■■ 寛政年間、喜助という三十歳ばかりの罪人が高瀬舟に乗った。護送の羽田庄兵衛は、弟殺しの罪人と聞いていたので、神妙にしてはいたが喜助の挙動に注意していた

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    391
    IA01570 (2021-02-14 評価=3.66)

    喜助は横になろうともしない。その額は晴れやかで、庄兵衛は不思議だと心の内で繰り返した。喜助はいかにも楽しそうで、鼻歌でも歌い出しそうに思われたからである
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    349
    IA01571 (2021-02-14 評価=3.00)

    罪人の多くは気の毒な様子をしている。弟殺しの喜助も人の情としていい気持ちはせぬはずである。気でも狂っているのか、世にもまれな悪人なのか、庄兵衛はわからなかった

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    392
    IA01572 (2021-02-14 評価=4.00)

    庄兵衛はこらえ切れず喜助に問いかけた。「私が島に送った者は皆島へゆくのを悲しみ、夜どおし泣く者が多かったが、おまえは苦にしていないようだ。どう思っているのか」
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    358
    IA01573 (2021-02-16 評価=4.00)

    喜助は笑って答えた。「世間で楽をしていた人には島流しは悲しい事でしょうが、つらくても、私にはお上のおっしゃる所に落ち着けるのが、まずありがたいのでございます

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    439
    IA01574 (2021-02-16 評価=4.00)

    遠島に当たり二百文をいただきました。これまで骨を惜しまず働いてきましたが、銭をもらっても借りたものを返して、また借りるだけで、懐に入れて持つ事はありませんでした
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    350
    IA01575 (2021-02-16 評価=4.00)

    この先、お上の物を食べさせていただければ、牢を出る時に二百文を自分の物として、島での仕事の元手にしようと楽しんでおります」と喜助は言った。庄兵衛は意外に思った

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    342
    IA01576 (2021-02-17 評価=4.00)

    庄兵衛は女房に子供四人と老母の七人暮らしである。女房はいい身代の商人の家の出で、倹約な生活で暮らすことができず、時折り里から金を持って来て帳尻を合わせている
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    380
    IA01577 (2021-02-17 評価=4.00)

    庄兵衛は妻の里方から物をもらう事が心苦しく、しばしば波風が起こる。自分も喜助同様、上からもらう扶持米を右から左へ渡して暮らしているに過ぎぬではないか、と思った

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    310
    IA01578 (2021-02-17 評価=4.00)

    しかし喜助には欲がない。骨を惜しまず働いてきたからこそ、牢で働かずに食が得られる事に満足したのであろう。庄兵衛は彼と自分とにはそこに大きな隔たりがある事を知った
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    316
    IA01579 (2021-02-17 評価=4.00)

    庄兵衛の暮らしは手一杯だが赤字ではない。幸いとも不幸とも思わないが、里方から金を穴うめすると失業や大病へのおそれが頭をもたげる。喜助は一人者だから気楽なのか?

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    360
    IA01580 (2021-02-18 評価=3.66)

    人は万一の時のたくわえを始めると、さらなるたくわえを欲し、踏み止まることができなくなる。庄兵衛は、目の前で踏み止まって見せてくれるのが喜助だと気づいた
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    323
    IA01581 (2021-02-18 評価=3.00)

    ■■ 庄兵衛は「喜助さん」と不適当な言い方で呼びかけ、「お前は人をあやめたということだ。そのわけを話してくれぬか」と尋ねた。喜助は恐れ入った様子で小声で話し出した

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    340
    IA01582 (2021-02-18 評価=3.00)

    「私は小さい時に両親が流行病で亡くなり、弟と二人、近所の走り使い等をして育ちました。大きくなると西陣の織り場に入って、織機を使う仕事につきました
  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    361
    IA01583 (2021-02-18 評価=3.00)

    そのうち弟が病気で働けなくなりました。ある日私が帰ると、弟はふとんに突っ伏し、周囲が血だらけになっていました。弟が顔を上げると、頬からあごが血に染まっています

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    397
    IA01584 (2021-02-18 評価=3.00)

    弟は『すまない。兄きに楽をさせたいと思い、のど笛を切って死のうと思ったのだ。深く押し込んだが横へすべってしまった。抜いてくれたら死ねるから抜いてくれ』と言うのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    326
    IA01585 (2021-02-19 評価=3.50)

    傷口をのぞくと、剃刀で横にのど笛を切ったが死に切れず、そのままえぐるように深く突っ込んだようです。医者を呼ぶと言うと『苦しい、早く抜いてくれ、頼む』と言いました