ロシア革命直後のウラジオストク。その男はロシア皇室の末路について話し始めた。残酷な戦場を舞台に、幻想文学作家夢野久作が描く、愛と死の物語
- IA02789 (2022-07-12 評価=4.00)
私は、赤軍が早くから私たちを発見し、あの森に先回りして、横合いから機関銃の射撃をした。そして私たちの一隊を森に追い込み、全滅させて引きあげた…、そう考えたのです - IA02790 (2022-07-12 評価=3.00)
私は欲望の奴隷となり、ヘトヘトの身体を引き起こして、インクの黒のような闇の中で這い込みはじめました。そうです、人非人の戦場泥棒です。奥に入ると、平地になりました - IA02791 (2022-07-13 評価=4.00)
この森には昔、砦か寺か何かあったらしく、時々人が来るようです。しかし死骸はもちろん、戦闘の遺留品もなく、味方は無事森から出たかも知れない、と思いました - IA02792 (2022-07-13 評価=4.00)
私は、森のまん中あたりのくぼ地に座りこみました。頭上をふりあおぐと、高い木の梢の間から星が見えます。私はポケットにガソリンマッチがある事を思い出しました - IA02793 (2022-07-14 評価=5.00)
火をつけて周囲を見て、私は驚いて火を落とし、尻餅をつきました。くぼ地の周囲の巨大な樹の幹には、一つずつ人間の死骸が括りつけてあったからです - IA02794 (2022-07-14 評価=5.00)
皆私の戦友で、シャツを引き裂いた綱で、手足をうしろ手に引っぱりつけて苦痛をあたえられ、傷口から細長く血を垂らし、うなだれているのです - IA02795 (2022-07-15 評価=5.00)
そんな光景を、何分見まわしていたのかわかりません。…私が精神病患者なら、その時に異常を呈したのでしょう。そのうち私の背後で、誰かがため息をした気配がしました - IA02796 (2022-07-15 評価=5.00)
背後を振り向くと、大きな樹の幹にリヤトニコフの屍体が紐で縛られて、引っかかっていました。私は叫び声をあげました。リヤトニコフは女性だったのです - IA02798 (2022-07-16 評価=4.00)
■6 彼女は私を恋していたに違いありません。私と結婚したいと思い、宝石を見せたのです。貪欲に囚われた愚かな私…。彼女は死の間際の一念で私をあの森に招き寄せたのです - IA02799 (2022-07-17 評価=5.00)
この街の人々はみんな贋物だと言い、彼女の「死後の恋」を冷笑するのです。けれども、あなたは信じて下さる。ありがとう、私の恋はスッカリ満足しました