G警視総監からとある家に隠されている手紙を取り戻したいと相談を受けるデュパン。手紙は一体どこに? 短編ながら完成度の高い本格推理小説
- IA02910 (2022-09-01 評価=5.00)
総監は「デュパン君の言ったとおりにもう一度調べたが、無駄骨だった。だが、日ごとに書類の重要性が増し、報酬は二倍にアップされたんです」と語った - IA02911 (2022-09-01 評価=5.00)
デュパンは「総監、あなたはもっとやれたと思うんだ。この事件については人の意見を参考にすればよかったのに。あなたは医者のアバニシーの話を覚えてますか?」と言った - IA02912 (2022-09-01 評価=5.00)
デュパンは「私はアバニシーと同様、無料では助言をしないのです。あなたがお礼の小切手を書いてくれるなら、手紙をお渡ししますよ」と言った - IA02913 (2022-09-01 評価=5.00)
総監は雷に打たれたように私の友を眺めていたが、我に返ると、小切手に署名してデュパンに渡した。手紙を受け取った総監は、内容を確認して家からとび出して行った - IA02914 (2022-09-03 評価=5.00)
デュパンは説明をはじめた。「G総監が家宅捜索について話した時、僕は彼の労力の及ぶところまでは完全無欠な調査をしたと思う。手紙が彼らの捜索範囲にあれば見つけたろう」 - IA02915 (2022-09-03 評価=5.00)
(デュパン)「ただ彼の手法はこの事件と相手に当てはまっていなかった。自分の計画に相手を適合させようとしてしまったのさ。僕は推理の得意な小学生を知っているが…」 - IA02916 (2022-09-03 評価=4.50)
(デュパン)「その子供は弾き石をする時、相手を観察して、はしっこさの程度をはかり、相手に合わせて丁か半かを言うのだ。だから一度は負けても二度目には勝つんだ」 - IA02917 (2022-09-04 評価=5.00)
(デュパン)「子供に、誰かがどれくらい賢いか、どれくらい善い人か、どうやって知るのか尋ねたら、、自分の表情を正確にその人の表情と同じようにするのだそうだ」 - IA02918 (2022-09-04 評価=5.00)
(デュパン)「そしてその表情と釣り合う考えや気持ちを待つ。総監たちがあれだけ失敗するのは、推理者の知力を相手と合致させないか、相手の知力のはかり方が悪いためなんだ」 - IA02919 (2022-09-04 評価=5.00)
(デュパン)「彼らは自分たちが隠しそうな方法しか考えない。特殊の悪人の狡知の質が高ければしくじってしまう。それに調査の方針を変えないしね」 - IA02920 (2022-09-05 評価=4.50)
(デュパン)「彼が試したことは、総監自身が経験してきた探索方針を大げさにしたものだ。つまり手紙を人目につかぬ穴に隠すのは、平凡な知力の者が用いる方法だよ」 - IA02921 (2022-09-05 評価=5.00)
(デュパン)「念入りに隠された隠匿物は、明敏でなくとも忍耐づよい探索者なら発見できる。ということは、総監とは異なる方針で隠されたことに疑いの余地はない」 - IA02922 (2022-09-05 評価=5.00)
(デュパン)「総監は詩人は馬鹿だから、詩人でもある大臣は馬鹿だと考えた。だが大臣は数学者でもある。単なる数学者ではだめだが、数学者兼詩人なら推理も得意なのさ」 - IA02923 (2022-09-06 評価=4.66)
私が「数学者は推理が得意、という通説もあるが」と反論すると、彼は「世間一般の観念・慣例は愚かなものさ。数学者は分析という言葉を広め、まるで代数学と思わせた」と言う - IA02924 (2022-09-06 評価=4.00)
(デュパン)「ごまかしの元祖はフランス人だ。『分析』が『代数学』を意味しない事はラテン語と英語の単語の意味が異なるのと同じで、僕は数学的な研究で導かれた推理に反対する」 - IA02925 (2022-09-06 評価=5.00)
(デュパン)「純粋代数学と言われているものの真理も、普遍的真理だと考えてしまうと誤りだ。倫理学や化学でも間違った公理がある」 - IA02926 (2022-09-07 評価=4.00)
(デュパン)「ブライアントの『神話学』では、だれも異教徒の寓話を信じないが、我々はついうっかり、寓話を実在するものと思って推論すると言っている。それに似た誤謬だよ」 - IA02927 (2022-09-07 評価=4.00)
(デュパン)「D大臣が単なる数学者なら、物事を数学的に考えるから、総監は手紙を見つけたに違いない。だが彼は詩人でもある。僕は物差しを彼の才能に適合させたのだ」 - IA02928 (2022-09-08 評価=5.00)
(デュパン)「彼は廷臣だから警察のやり方を知っていて、待ち伏せや屋敷の捜索も予期していた。警察に十分捜索する時間を与え、手紙は家にないと確信させる策略だったのだよ」 - IA02929 (2022-09-08 評価=5.00)
(デュパン)「彼は探針や錐、拡大鏡を使えば分かる場所に隠すほど、愚鈍ではなかった。当然の成り行きとして、僕は単純な手段をとったにちがいないと悟った」