留年して卒業が伸びた大学生佐野次郎。癖のある友人馬場らと雑誌｢海賊｣刊行を計画する。昭和初期の学生達の情熱と葛藤を描く太宰治初期の異色作
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馬場「それに、ひどい猫背を装い、無精ひげをわざと伸ばしている。のっぺらぼうに眉毛を描き、目鼻をつけて知らんぷりをする芸をしているような奴だ」 - IA03247 (2023-02-12 評価=4.00)
「佐竹、太宰、佐野次郎、馬場、という歴史的な仲間が集まった。いやな仲間もまた一興。雑誌に僕の運命を賭ける」と馬場が言ったので、私は興奮して起きた。昼頃、佐竹が来た - IA03248 (2023-02-13 評価=3.00)
太宰も続いて来た。彼は馬場の嫌いな種類の服装をしていたばかりか、窓のそとの景色を眺めたふりをし「ちまたに雨が降る」と、女のような声で言って笑ってみせた - IA03249 (2023-02-13 評価=4.00)
私がお茶道具を取りに行く間に、馬場と太宰は争っていた。太宰が「一体雑誌をやる気なのかね？」と言うと、馬場も「御託宣や警句、冗談はよしにしましょう」と反発する - IA03250 (2023-02-14 評価=4.00)
二人は論争を続け、太宰は「君は芸術家の伝記だけ知って、芸術家の仕事を知らないようだ。作品を市場にさらしたあとの突き刺されるような苦しみを知らない」と主張した - IA03251 (2023-02-14 評価=4.00)
馬場は「あなたの小説を読んだことはないが、いくつかの文学要素を取り除けば、ただの駄洒落小説のような気がする」と言い、太宰は生きて行かなきゃならないのです、と言った - IA03252 (2023-02-15 評価=4.00)
馬場がなぜ僕たちと一緒に雑誌をやろうと言うのか尋ねた。太宰は「怒りたくなったから。叫びが欲しいからだ」と答えた。「つまり楯を持って格好を付けたいのですね」と馬場 - IA03253 (2023-02-15 評価=3.00)
太宰が「登竜門は、ひとを市場へ一直線に送りこむ地獄の門だ。連れて行くところまでは行く…」と言いかけると、馬場は言葉をさえぎり「海賊クラブは解散だ」と声を上げた - IA03254 (2023-02-16 評価=4.00)
馬場が立ちあがって、太宰の頬を平手で殴ると、太宰は傲然と頭をもたげた。その晩、私は馬場と二人、おでんやで酒を飲んだ。馬場は「佐竹が太宰を抱き込んだのさ」と言った - IA03255 (2023-02-16 評価=4.00)
馬場は続けた。「佐竹は僕から君をとろうとしたのだ。とはいえ、雑誌をやめてさばさばしたよ。君を好きだから、君をはなしたくなくて海賊を持ち出したのさ」 - IA03256 (2023-02-17 評価=3.00)
「君は美少年だし。菊が君に惚れているぞ。死んでも君には言うものか、と言っていた。ところで君は誰をいちばん好きなんだ？」と馬場は言った - IA03257 (2023-02-17 評価=5.00)
「みんな嫌いです。菊ちゃんだけ好きだ」私が言うと、馬場は一瞬微笑んだ後「そう言って笑うがいい。僕には才能がある。僕は荒城の月を作曲した。嘘じゃない」と嗚咽した - IA03259 (2023-02-19 評価=5.00)
■四 物語は意外な結末へ… 「ダス・ゲマイネ」(独 Das Gemeine) は「通俗(性)」の意。 太宰治作 ダス・ゲマイネ
