小石川養生所で六助という52歳の男が癌で死亡した。ところが木賃宿の主人が男のこみ入った家族関係について知らせてきた…。「赤ひげ診療譚」第二篇
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――六助は酒を飲みながら人の話を聞くだけで、彼が蒔絵師とわかった頃には、人の話も聞かなくなってしまったという。柏屋に到着すると、四人の子供が待っていた - IA03779 (2023-10-22 評価=4.00)
■四 四人の子供は六助の娘の子で、11歳の長女ともが熱を出して寝かされ、その下に長男、次女、次男がいた。部屋は唐紙も障子も古く切り貼りだらけで、うらぶれたけしきにみえた - IA03780 (2023-10-24 評価=4.00)
登はともの診察をしたが、結核になる危険があり、兄弟も栄養が悪かったので金兵衛にいくつか注意を与えた。彼は溜息をつき、商売が左前なのに厄介ごとばかり、と愚痴をこぼした - IA03781 (2023-10-24 評価=4.00)
そして金兵衛は続きを話した。貸家の管理人で松蔵という老人が六助の孫四人を連れて来たという。その話によると、松蔵の管理している長屋に五年少し前、富三郎という男が越して来た - IA03782 (2023-10-25 評価=4.00)
富三郎は指物(木工細工)の職人で妻と子供四人がいた。彼は怠け者でいつも窮迫し、周囲に借金をしていた。おとなしい妻のおくにには「おやじの所へ行って来い」と当たりちらしていた - IA03783 (2023-10-25 評価=3.00)
富三郎は「てめえは一人娘だ、おやじは娘や孫の困窮を助けないなんて人間じゃねえ」と言っており、松蔵がおくにに尋ねると、父とはわけがあって義絶同様になっている、と答えた - IA03784 (2023-10-26 評価=4.00)
富三郎には悪いなかまができ、仕事もしなくなった。そうしたある夜、おくにが松蔵を訪ね、先日の釈迦像の盗難の情報を寄せた者に褒美を与えるという触書について尋ねたのである - IA03785 (2023-10-26 評価=5.00)
おくには、夫が天井裏へ仏像を隠していると言い、「銀25枚もらえるなら家計が助かるし、牢屋の苦しみを知れば富三郎の為にもなる。鬼になって訴人したい」と松蔵に話した - IA03786 (2023-10-27 評価=5.00)
松蔵は町役と相談の上、おくにに仏像を手に駈け込み訴えをさせた。すぐ呼び出された松蔵と町役は、おくにの利分になるよう申し立てたが、お奉行の島田越後守は不届きと断じた - IA03787 (2023-10-27 評価=5.00)
結果は、恩賞めあてに夫を訴えるのは不届きであり、入牢申し付ける、という内容だった。そして松蔵には柏屋金兵衛という旅籠に父六助がいる、というおくにの伝言が伝えられた - IA03788 (2023-10-28 評価=5.00)
■五 松蔵はそれだけ話して帰ってしまった。金兵衛は、六助は養生所だし、子供も熱を出していて困ってしまい、仕方なく新出先生に知恵を借りようと思ったのだ、と言った - IA03789 (2023-10-28 評価=4.00)
金兵衛が、建物の釘がぜんぶ逆に打つさかさ釘になっている、と言って旅籠賃をふみ倒した易者の話などをしてぼやいていると、去定がやって来た - IA03790 (2023-10-30 評価=4.00)
去定は金兵衛に投薬の方法等を教え「町奉行で話すが、しばらく子供たちの面倒をみてもらうかもしれぬ」と言った。渋る金兵衛に去定は六助が五両二分の金を残している事を話した - IA03791 (2023-10-30 評価=4.00)
「おまえに損はさせない」と去定が言うと、金兵衛は驚いていたが子供たちの面倒をみると答えた。金兵衛は父親の富三郎の状況は知らなかったので、去定は子供たちに名と年を尋ねた - IA03792 (2023-10-31 評価=4.00)
去定は子供たちに「おっかさんはすぐ帰る、姉さんの病気も治る」と言って外に出た。伝通院まで歩くと竹造を帰し、去定は辻駕籠(かご)をひろい、登と二人で小伝馬町に向かった - IA03793 (2023-10-31 評価=4.00)
去定は小伝馬町の牢屋で奉行に面会を求めた。不在の奉行島田越後の代わりに同心の岡野が慇懃に出迎え、おくにを診察したいという去定の要望を許可した - IA03794 (2023-11-01 評価=4.00)
岡野は中庭に面した狭い部屋へ案内すると、おくにを連れてきて自分は出ていった。去定は彼女に、父六助の治療をしていた医者だ、お前をここから出すために来た、と話しはじめた - IA03795 (2023-11-01 評価=4.00)
■六 おくには顔も蒼黒く、皮膚は乾いて皺だらけで元気がなく、32歳のはずだが40歳以上に見えた。去定は彼女を確認すると岡野に話しに行ったので、登が彼女に話しかけた - IA03796 (2023-11-02 評価=3.00)
登は父親の死と子供たちについて説明し、去定が必ずおくにを助けるから、詳しい事情を話すよう説得した。おくには沈黙していたが、やがて独り言のような口ぶりで話しはじめた - IA03797 (2023-11-02 評価=4.00)
おくには六助の一人娘だが、母親が六助の弟子(富三郎)と通じて出奔した。そのため10歳まで里子に出ていたが12歳の時、生みの母が連れに来た。その時おくにはうれしかったという