石田三成の盟友、大谷吉継(刑部)の物語。関ケ原決戦に至る彼の心情と三成への思い、奮戦ぶりなど、戦国感覚が肌に伝わる吉川英治の短編歴史小説です
- IA03857 (2023-12-02 評価=4.00)
■一つの丘 大谷刑部は小早川秀秋の裏切りを知ると「手から水が漏れた」と悔やんだ。輿で丘の小高い所へ駈けのぼった刑部は、心眼と心耳で、東軍と西軍のすさまじい戦闘を見た - IA03858 (2023-12-03 評価=5.00)
刑部のまわりを五、六十人の兵が囲んでいる。喘ぎながら丘に上がってくる少数の者たちの報告は、味方の悲壮な敗報ばかり。血膿が流れる刑部の顔が、その時横を見た - IA03859 (2023-12-03 評価=5.00)
湯浅五助がもどったのである。五助は「もはや、もり返す手だてはないかと存じまする」と報告した。刑部は家臣らを呼び集めて「よく戦ってくれた」と感謝の言葉を述べた - IA03860 (2023-12-04 評価=5.00)
刑部は「私は死の途を選ぶ。皆は目ざましゅう死ぬなり、故郷へ去るなりせよ。今が別れ。めいめい名を名乗り、永別しようぞ」と言った。そして家臣たちはみな名乗って去った - IA03861 (2023-12-04 評価=4.00)
湯浅五助だけが主人に付き添って主人の首をはねると、その首を抱いて霧の中へ駈け去った。
「大谷刑部(おおたにぎょうぶ)」
吉川英治作 昭和11年(1926)