美しい女流作家のもとに送られてきた謎の原稿。中には世にも不思議な犯罪の様子が詳細に記されていた。江戸川乱歩のホラー作品として有名な初期の代表作
- IA04077 (2024-05-10 評価=4.00)
どんな似通った背恰好の人でも違いがあり、感触によって識別でき、そこにはまる裸の肉体と、声音と匂いとがあるばかりです。私はそこで、うら若い異国の乙女に烈しい愛着を覚えました - IA04078 (2024-05-11 評価=4.00)
彼女は、小声で歌を歌いながら入って来て、豊満でしなやかな肉体を私の上に投げつけました。しかも笑い出すとピチピチはね回って、しばらくクネクネと身体を動かしておりました - IA04079 (2024-05-11 評価=4.00)
彼女は何の不安もなく、全身の重みを私の上に委ねています。私は彼女を抱きしめる真似をしたり自由自在なのです。私は、この不思議な感触の世界に惑溺してしまいました - IA04080 (2024-05-12 評価=4.00)
私のような男はいつもひけ目を感じながら生活していました。それが椅子の中では、窮屈を辛抱をするだけで、美しい人に接近し、悪魔の国の愛欲に陶酔することができるのです - IA04081 (2024-05-12 評価=4.00)
私はこの奇怪な喜びに夢中になり、数ヶ月という長い年月を椅子の中で生活しておりました。しまいには、身体中が痺れたようになって、外に出ると這っていた程でございます - IA04082 (2024-05-14 評価=4.00)
椅子があるのはホテルですから、絶えず客の出入りがあり、私の奇妙な恋も時と共に相手が変わって行きました。数々の恋人の記憶は、身体の恰好によって私の心に刻みつけられました - IA04083 (2024-05-14 評価=4.00)
また、ある時欧州の強国の大使が、その偉大な体躯を私の膝の上に乗せたとがございます。世界的によく知られていた人だけに、私はその肌を知ったことが誇らしく思われました - IA04084 (2024-05-15 評価=4.00)
万一、私がナイフで彼の心臓をひと突きしたりしたら、外交関係に大きな影響を与えだろうと考えると、私は不思議な得意を感じたのです。有名なダンサーが腰かけたこともあります - IA04085 (2024-05-15 評価=4.00)
ダンサーの肉体は理想的な肉体美の感触を与えてくれました。ところが、ここに来て何ヶ月かの後、経営者が帰国することになり、ホテルを居抜きで日本の会社に譲り渡したのです - IA04086 (2024-05-16 評価=4.00)
その会社はホテルを一般向きの旅館として経営する事にしたので、私の椅子を売却することになったのです。私はガッカリしましたが、一つの新しい希望もありました - IA04087 (2024-05-16 評価=4.00)
それまでに愛した女性は、すべて異国人で物足りなさを感じており、今度は日本人の家庭に置かれるかも知れないと思ったからです。そして、私の椅子は早速買い手がつきました - IA04088 (2024-05-18 評価=5.00)
買い手はある官吏で、嬉しいことに、置かれた場所はその若く美しい夫人が使用する書斎でした。夫人は書斎で著作に没頭しており、私は約一ヶ月もの間、夫人と共におりました - IA04089 (2024-05-18 評価=5.00)
私ははじめて接した日本人の女性に本当の恋を感じ、彼女を愛しました。そして秘密の愛撫を楽しむだけでなく、私の存在を知らせ、私を愛してもらいたく思ったのでございます - IA04090 (2024-05-20 評価=4.00)
そこで、私は椅子が居心地よく感じ、愛着を感じるように努めました。彼女の身を優しく受け、居眠りを始めるような場合には、ゆりかごのようにかすかに膝をゆすりました - IA04091 (2024-05-20 評価=5.00)
その心やりからか、夫人は椅子を愛しているように思われ、ついに、私は恋人の顔を見て、言葉を交わしたいと思いつめたのでございます。実は…(以降は入力してお楽しみください)