武芸の達人だが、人の良い浪人三沢伊兵衛。仕官先を探していた彼は、ある日藩の老職の目に留まる……。何度も映像化された、夫婦の絆を描く心温まる傑作
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同宿者たちは生活を取り戻していった。伊兵衛にも登城の支度で来るようにとの使者が来た。妻は期待しない顔をしながらも、二人して出立の準備をした - IA05400 (2026-10-12) NEW
■7 伊兵衛は日の傾く頃に城から帰り、殿様からの引き出物の包みを妻に渡した。「今日は飲ませてください」と伊兵衛が言い、おたよも明るく返事をした - IA05402 (2026-10-13) NEW
このあいだのように嬉しいことは初めてだった、伊兵衛らの繁昌を祈る、など感謝の言葉があったという。伊兵衛も浮き浮きと今日は弓や馬術もうまくいき、禄高(給料)も内定したことを話した - IA05403 (2026-10-13) NEW
藩主は二十そこそこの若さながら武芸に熱心な、新進気鋭の人物で、新たに人を増やして召し抱えるという。二人は若干の心配しながらも、食事にすることにした - IA05404 (2026-10-17) NEW
明くる日は同宿者三人が出立していった。みな、丁寧に礼はしながらも、いつか再会したいとは言わず、もうお眼にはかかれない、と口に出すことをおたよは不思議がった - IA05405 (2026-10-17) NEW
――あの人たちには今日しかない。今は信じられるが再会の望みは持てないのだ。夕方になると宿には猿回しなどの新たな客が来た。おたよが今日は峠を越すにはよい日和だ、と言った - IA05407 (2026-10-18) NEW
馬のひづめの音が宿の前で止まり、牛尾大六が入ってきた。伊兵衛は平静を装い、微笑しながら出迎えた。だが大六は中に入ろうとしない - IA05408 (2026-10-19) NEW
大六は、伊兵衛が城下町の道場で賭け試合をし、金を取ったことが問題になった、と告げた。それを聞いて、伊兵衛は青山家の道場で相手をせず帰った男がいたことを思いだした - IA05409 (2026-10-19) NEW
賭け試合は武士として不面目であり、訴え出た者がある以上、話はなかったもの思ってほしい、と大六は告げた。大六が差し出した金子に伊兵衛は狼狽したが、おたよは「頂戴します」と受け取った - IA05410 (2026-10-20) NEW
彼女は「賭け試合は、大勢の人たちを救うことができるばあいもあるのです」と抗議した。そして伊兵衛に「気の毒な方たちを喜ばせるため、いつでも賭け試合をなすってください」と言った - IA05411 (2026-10-20) NEW
牛尾大六は辟易して去り、間もなく二人は宿を出立した。その際二人は主膳のくれた金の半分を、困っている客の世話のために宿の主人に預けた - IA05412 (2026-10-22) NEW
二人は峠へ向かった。彼女は、立派な腕があっても出世できない、おかしな世間だと思う一方、良人が貧しくともみんなに喜びを与える立派な人だと思うと、足どりが軽くなった - IA05413 (2026-10-22) NEW
峠を越えると隣国の山野が視界に広がった。伊兵衛は妻に「元気を出そう」と言った。
「雨あがる」 山本周五郎作 昭和26(1951)年


