酒癖の悪い父親が庭で頭を殴られて死んでいた。疑心暗鬼に陥る家族四人。江戸川乱歩が30歳の時に発表した、会話体で進行する傑作心理ミステリー作品
- IA00565 (2020-01-15 評価=4.16)
■その翌日■ 酒癖の悪い父親が庭で頭を殴られて死んでいた。その家族に降りかかる疑惑の影。江戸川乱歩が30歳の時に発表した、会話体で進行する傑作心理ミステリー作品 - IA00567 (2020-01-15 評価=4.00)
二十余年の間、父親の暴虐を堪え忍んで来たかと思うと涙がこぼれる。一家の者が路頭に迷わず、先祖からの屋敷に住んでいられるのは、みんな母親の力だ - IA00568 (2020-01-15 評価=3.33)
三十近い兄貴は、会社で通訳係をやっているが、親父の為に縁談もまとまらない。だが母親を見捨てる気にはなれないそうで、親父ととっ組みあったりするのも無理はない - IA00570 (2020-01-16 評価=4.00)
警察の話によると、父親は夜中に庭へ出て、大きな切石の上に腰かけて涼んでいるところを、夜一時ごろ後ろから余り鋭くない刃物でなぐられたらしい - IA00571 (2020-01-16 評価=3.50)
ある小料理屋で、親父になぐられて怪我をした男が怪しいように思うが、状況から外部からはいったとも考えにくい。とは言え、内部の者の犯行とは思いたくない - IA00573 (2020-01-17 評価=3.50)
あの朝、おれは親父の死がいのそばで、クチャクチャに丸めた麻のハンカチを拾っていた。状況から考えて兄貴のものに違いない - IA00574 (2020-01-17 評価=3.50)
あの夜、兄貴が寝ていた二階から階段を下りる音を聞いた。しかも、親父の死骸を見た時、手に持っていた帯を靴ぬぎ石の上へ落とし、何かと一緒に大急ぎで拾い上げたのだ - IA00575 (2020-01-17 評価=3.50)
その後の兄貴のそぶりを考え合わせると、疑ってしまう。家族も彼を疑っており、家の中には何だかえたいの知れない、不愉快な、薄気味の悪い、一種の空気が漂っている - IA00577 (2020-01-18 評価=4.00)
■十日後■ まだ解決には至らない。四人の者が一つ家にいて、口もきかないで、にらみあい疑っている。その内のだれか一人が、人殺しなのだ - IA00579 (2020-01-18 評価=5.00)
兄貴が帯で隠したのは、母親の櫛らしい。兄貴はそのせいで母親を疑っているようだ。それに気づいてから、おれも母親の一挙一動に注意する様になった。 - IA00580 (2020-01-18 評価=4.00)
近頃では、世の中が、何かこう、まるで違った物に見える。母親は母親で、また、たれかを疑っており、まるで、いたちごっこだ。 - IA00581 (2020-01-19 評価=4.00)
母親は小さなほこらの後ろの妹を凝視していた。おれは直覚的にすべての秘密がほこらにあり、それを妹が握っているのではないか、と感じた - IA00582 (2020-01-19 評価=4.00)
おれはほこらの後ろを調べたいのだが、妹と母親の目が光っている。ようやく目をのがれて庭へ出てみると、兄貴が見ているという風で、どうしても機会がない - IA00583 (2020-01-19 評価=5.00)
■十一日目■ 昨晩、おれは二階の自分の部屋の窓から屋根を伝って、庭へ降りた。ほこらのうしろを掘ると、こってりと黒い血の塊がねばりついた、自分の家の斧が出て来た - IA00584 (2020-01-19 評価=5.00)
斧は元通り土に埋め、屋根伝いに部屋に戻ったが、犯人は分からない。母親や兄貴や妹が、犯人であるかのような幻が目先に現れて、夜も寝られない