思春期の少女の揺れ動く心理と自意識をモノローグ形式で描く太宰治の代表作の一つ。他者や社会との関わりに悩む少女の一日を描いた異色作
- IA00943 (2020-07-16 評価=3.33)
私たちには、自身の行くべき最善の場所がおぼろげながら判っている。だけど生活の上に具現するのは難しいから、多くの人の通る路を進むのが利巧と思ってしまうのだ - IA00944 (2020-07-16 評価=3.33)
学校の修身(道徳科目)と世の中の掟とは、すごく違っている。嘘をつかない人はきっと敗北者になるだろう。だけど母や皆に反対してまで自分の考え方を押し通すのはおっかない - IA00945 (2020-07-16 評価=3.33)
私は洋服一枚作るのにも、人々の思惑を考えてしまう。自分の個性を愛しているけれども、大勢の人が集まると卑屈になって、つい気持ちと離れたことを言ってしまう - IA00946 (2020-07-16 評価=4.00)
席が空いたので割りこむ。左隣のおばさんは顔は綺麗だが厚化粧で、ぶちたいほど厭だ。向かいの若いサラリーマンたちも覇気が無さそうだ - IA00947 (2020-07-18 評価=4.00)
二、三日前から、庭の手入れに来る植木屋さんの顔が目にちらつく。顔の感じが思索家みたいで、色は黒くしまり目がよい。黒いソフト帽をかぶった顔は植木屋には惜しい - IA00948 (2020-07-18 評価=3.50)
道具を包んできた風呂敷は、植木屋さんが初めて来た大掃除の日にお母さんからもらったものだ。可愛い風呂敷。誰か見つめてくれれば、お嫁に行く事に決めてもいいのに - IA00949 (2020-07-18 評価=4.50)
本能という言葉には気が狂いそうになる。なぜ私たちは自分だけで満足し、自分だけを愛していけないのだろう。けれども、真実は自分が厭だと思っている所にあるかも知れない - IA00950 (2020-07-18 評価=3.50)
もう、お茶の水。いま過ぎたことを、いそいで思いかえそうと努めたけれど、いっこうに思い浮かばない。いま、は遠くへ飛び去って、あたらしい「いま」が来ている - IA00951 (2020-07-19 評価=4.00)
けさの小杉先生は綺麗。学校の先生なんてさせておくの惜しい女のひとだ。だけど、お話は、どうしてこんなに固いのだろう。頭がわるいの? 悲しくなっちゃう - IA00953 (2020-07-19 評価=3.33)
午後の図画の時間に、きょうも伊藤先生の絵のモデルになる。先生と二人で向かい合っていると、とても疲れる。理屈が多すぎる。ハッキリしない人だ - IA00955 (2020-07-20 評価=3.66)
立っているとお金が欲しくなる。疲れた。放課後はお寺の娘のキン子さんとハリウッド美容院に行く。頼んだようにできていないので、がっかり - IA00956 (2020-07-20 評価=4.00)
キン子さんは「このまま見合いに行こうかしら」「お寺の娘はお寺へお嫁入りするのがいい」と言って私を驚かせる。席が隣というだけなのに、私を一番の親友だと言っている - IA00957 (2020-07-20 評価=3.33)
キン子さんと別れてバスの中でいやな女のひとを見た。服や髪が乱れていて赤黒い顔をし、大きいおなかをしていて、ときどき一人でにやいや笑っている - IA00958 (2020-07-20 評価=3.33)
電車で隣り合わせた厚化粧のおばさんを思い出す。女はいやだ。いっそこのまま少女のまま死にたくなる。重い病気になって滝のような汗を流したら清浄になれるかも知れない - IA00960 (2020-07-21 評価=3.33)
私が神田あたりの下駄屋のお嬢さんで、生まれてはじめて郊外の土を踏む、と想像しながら、田舎道を歩く。けれども、なんだか淋しくなった - IA00961 (2020-07-21 評価=3.33)
このごろ自分がいけないのか、なぜだかいつでも何かにおびえている。草原に仰向けに寝転がってお父さんを呼んでみる。「お父さん、夕焼けの空が綺麗です」 - IA00962 (2020-07-21 評価=3.33)
ピンクのもやは私のからだをふんわり包み、神々しい。「みんなを愛したい」と涙が出そうなくらい思う。そして美しく生きたいと思う