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駈込み訴え (太宰治) 39分割入力文の数= 39 <<  1  2   >>

イエス・キリストへの愛に苦しむイスカリオテのユダ。だが、献身的な愛は彼に迷惑がられる…。愛と死をテーマに、魂を揺さぶる太宰治の傑作短編

作家や目的で選ぶ

  • 歴史
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    342
    IA02325 (2021-12-21 評価=3.37)

    申し上げます。あの人はひどい、いやな奴です。悪い人です。案内しますから、あの人を切りさいなんで殺してください。私が今日まで、どんなに馬鹿にされて来たことか
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    337
    IA02326 (2021-12-22 評価=3.50)

    堪えられる所までは堪えてきましたが、私がいかにあの人をかばってきたか、誰も気づかない。あの人は傲慢(ごうまん)でうぬぼれ屋だ。人に何でもできると思われたいだけだ

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    376
    IA02327 (2021-12-22 評価=3.00)

    この世は、誰かに頭を下げ、少しずつ人を抑えてゆくしかない。私がいなかったら、経験に乏しいあの人は、熱狂的に天国を信じる無能な弟子たちと、のたれ死にしている筈です
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    365
    IA02328 (2021-12-23 評価=4.00)

    私が群集からさい銭を巻き上げ、物持ちからお供え物を取り立て、日常衣食の世話までしているのに、あの人や弟子たちは感謝せずに贅沢を言い、無理難題を言いつけるのです

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    343
    IA02329 (2021-12-23 評価=4.00)

    貧しい商人である私から見れば、あの人は欲がなく、お金を貯めても全部むだな事に使わせてしまいます。それはいいのですが、優しい言葉の一つくらいは掛けてほしいのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    328
    IA02330 (2021-12-24 評価=4.00)

    一度、あの人は「おまえにも世話になるね。寂しさはわかっているが、不機嫌な顔をせず、まことに神を信じるなら、素知らぬふりで綺麗にし、微笑むがよい」とおっしゃいました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    328
    IA02331 (2021-12-24 評価=4.00)

    私は声を出して泣きたくなり、誰にも知られなくても、あなた一人にわかって下さったら、それでよいのです、私はどの弟子よりもあなたを愛しているのです、と言いました
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    306
    IA02332 (2021-12-25 評価=3.50)

    そして、あなたがいなくなったら私も死にます、もしあなたが弟子たちから離れ説教を止め、母のマリヤ様と共に私の村で暮らすなら、私は一生奉公致します、と言いました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    374
    IA02333 (2021-12-25 評価=4.00)

    しかし、私に打ち解けて下さったのはその時だけでした。私の愛しているあの人を他人に渡すなら、私が殺してあげる。私は神も、あの人の復活も信じない、と思いました
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    366
    IA02334 (2021-12-26 評価=3.50)

    馬鹿な弟子どもは、あの人を神の御子と信じ、神の国の福音を楽しみにしていますが、全部でたらめです。けれども私は報酬も考えず、あの人の美しさを純粋に愛しているのです

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    358
    IA02335 (2021-12-26 評価=3.33)

    あの人は、私の無報酬の純粋の愛情を受け取って下さらない。パンの世話すら軽蔑するのです。旦那さま、あの人の居所を知っています。案内しますので、あの人を殺して下さい
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    334
    IA02336 (2021-12-27 評価=3.50)

    マルタの妹の(マグダラの)マリヤが香油をあの人の頭にかけて濡らし、彼女の髪の毛で濡れた両足を拭った時も、私は高価な油をもったいないと怒鳴りました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    401
    IA02337 (2021-12-27 評価=3.50)

    私が油を売れば貧乏人に施せる、と言うと、あの人は「それは今後いくらでもできる。この女の行為はとむらいの備えであり、将来も語り伝えられるだろう」と上気顔で言うのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    340
    IA02338 (2021-12-28 評価=3.50)

    その時、あの人の声や瞳に異様なものが感じられたのです。無念至極ですが、貧しい百姓女に、恋ではないが、似た感情を抱いたのではないか? なんという失態、大醜聞でしょう

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    368
    IA02339 (2021-12-28 評価=4.00)

    私には人の弱点を鋭く見届ける力があります。あの人が少しでも百姓女に感情を動かしたのは醜態でした。これまで、あの人は女に好かれても、水のように静かだったのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    341
    IA02340 (2021-12-29 評価=4.00)

    私は女に心を動かしませんが、マリヤは華奢で色白、澄んだ眼がいつも遠くを眺めていて、皆が不思議がる気高い娘でした。私ですら白絹でも買ってやろうと思っていたのです

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    337
    IA02341 (2021-12-29 評価=4.00)

    私は口惜しいのです。あの人は私の女をとったのだ。いや、あの女が私からあの人を奪ったのだ。ああ醜いことを口走りました、そんな浅はかな事実は無く、口惜しかったのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    364
    IA02342 (2021-12-31 評価=3.00)

    ジェラシーはやりきれない悪徳です。私には優しい言葉も下さらず、賤しい百姓女を御頬を染めてかばわれる。あの人はただの人だ。いっそ私の手で殺してあげようと思いました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    339
    IA02343 (2021-12-31 評価=4.00)

    大群衆でエルサレムへ向かう途中、あの人はロバに乗り「予言通り、なんじらの王はロバの子に乗って来た」と弟子たちに宣言しました。私はそのあわれな姿に浮かぬ気持ちでした
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    362
    IA02344 (2021-12-31 評価=4.00)

    あの人は醜態をさらす前に切らねばならず、私は憐憫を感じました。しかし群集は数を増し、道々に色とりどりの着物やシュロの枝を敷きつめて、あの人を歓呼で迎えたのです