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地獄変 (芥川龍之介) 76分割入力文の数= 76 <<   1  2  3  4   >>

平安時代の高名な絵師、良秀(よしひで)の物語。屏風絵「地獄変」を描く際に彼の傲慢な性格が招いた悲劇とは…。芥川龍之介の代表作

作家や目的で選ぶ

  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    336
    IA03148 (2022-12-14 評価=4.00)

    殿上人から乞食まで、あらゆる身分の罪人が、牛頭馬頭の獄卒にさいなまれて、四方八方へ逃げ迷っているのです
  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    393
    IA03149 (2022-12-15 評価=4.00)

    その中で中空から落ちて来る牛車(ぎっしゃ)が目立ってすさまじく、高級女官が白いうなじを反らせながら悶え苦しんでいる姿に、画面の恐ろしさが集中していたのです

  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    335
    IA03150 (2022-12-15 評価=4.00)

    見るものには、叫喚の声が伝わってくるようでした。しかし、これを描く為に、本朝第一の絵師良秀は、自分で命さえも捨てるような、無惨な目に出遭ったのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    359
    IA03151 (2022-12-16 評価=5.00)

    ■七 良秀は五六ヶ月の間憑かれたように仕事をしておりました。福徳の大神に祈誓をかけて画道をなしたので、彼の周囲に霊狐が群がっている姿が見えると申す者もおりました

  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    375
    IA03152 (2022-12-16 評価=5.00)

    地獄変の屏風を描いた時は、夢中になり方がはなはだしかったようです。それも竜覆寺の五趣生死の図を描いた際の、往来の腐れかかった死骸を写した程度ではございません
  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    365
    IA03153 (2022-12-17 評価=4.00)

    弟子の一人に良秀が急に「この頃夢見が悪いので、昼寝の間、枕もとに座っていて貰いたい」と遠慮がましく頼んだのです

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    364
    IA03154 (2022-12-17 評価=4.00)

    弟子が奥の画を描く部屋について行くと、まだ下描き段階の屏風が立て回してあり、良秀は肘を枕にすぐ寝入ってしまいましたが、しばらくして気味の悪い声がしはじめました
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    337
    IA03155 (2022-12-18 評価=3.00)

    ■八 声は「おれにどこへ来いと? 奈落へ、焦熱地獄へ来い――貴様は誰だ?」という言葉に変わり、思わず弟子が師匠の顔を見ると、口の中で舌が目まぐるしく動いているのです

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    299
    IA03156 (2022-12-18 評価=4.00)

    「奈落へ来い。奈落にはおれの娘が待っている」気味の悪い心もちで、弟子は良秀を揺り起こそうとしましたが、容易に眼は覚めないので、筆洗い用の器の水を顔に浴びせました
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    358
    IA03157 (2022-12-19 評価=4.00)

    やっと良秀ははね起きましたが、夢の中の異類異形がまぶたに残っているらしく、恐ろしそうな眼で空を見ていたのです

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    298
    IA03158 (2022-12-19 評価=4.00)

    しばらく後、良秀は別の弟子を呼び、裸になるように言った上「鎖で縛られた人間が見たいので、しばらくの間、わしのする通りになってくれまいか」と冷然と申したのです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    348
    IA03159 (2022-12-20 評価=4.00)

    良秀は弟子の背中へ乗り、鉄の鎖でぐるぐる巻きにすると、勢いよくごろりと横倒しに倒しました。弟子は師匠の気が違って殺されるのでは、と思ったそうでございます

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    335
    IA03160 (2022-12-20 評価=3.00)

    ■九 弟子の手足は折り曲げられ、ただ首が動くばかり。鎖に血の循環を止められて皮膚の色が赤み走って参ります。良秀は眺めながら同じような写真の図を何枚も描いています
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    349
    IA03161 (2022-12-21 評価=4.00)

    部屋の隅の壺の陰から黒い油のように蛇が動き、弟子は「蛇が!」とわめきました。蛇はもう少しで弟子のくびの肉へ冷たい舌の先を触れようとしていました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    347
    IA03162 (2022-12-21 評価=4.00)

    良秀はさすがに画筆を投げすて、蛇の尾をつかまえましたが、「一筆描き損じたぞ」といまいましそうに弟子の鎖をほどいたのです。後で聞くと、蛇は良秀が飼っていたそうです
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    321
    IA03163 (2022-12-22 評価=4.00)

    最後に、まだ十三四の色の白い女のような弟子がおそろしい目にあいました。その弟子が良秀に呼ばれて行くと、良秀は猫に似た見慣れない一羽の鳥を養っておりました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    294
    IA03164 (2022-12-22 評価=4.00)

    ■十 良秀は自分のしている事に口を挟まれるのが大嫌いでした。絵の参考にするしゃれこうべや銀の椀、蒔絵の高坏などは、どこにしまってあるのか誰にもわかりません
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    340
    IA03165 (2022-12-23 評価=4.00)

    良秀は呼びつけた弟子に見せた異様な鳥について「よく馴れているだろう。これは二三日前に鞍馬の猟師がくれたみみずくという鳥だ」と嘲笑うような調子で言いました

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    355
    IA03166 (2022-12-23 評価=4.00)

    良秀が鳥の背中の毛を撫で上げると、鳥は鋭く一声ないて、弟子の顔にとびかかりました。弟子は袖で顔を隠し、部屋を逃げ惑いましたが、怪鳥は眼を目がけて飛んで来ます
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    投稿 TypetrekJさん
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    398
    IA03167 (2022-12-24 評価=4.00)

    弟子は余りの気味悪さに師匠の部屋が妖気に閉ざされた谷のような気がしたそうです。しかも良秀はその騒ぎ中、冷然と少年が異形の鳥にさいなまれる有様を写していたのです