江戸川乱歩が絶賛した谷崎潤一郎の探偵小説。入力しやすい作品で、確率を積み上げ殺人を行うアイデアは、誰しも自分なら、と考えてしまうでしょう
- IA03485 (2023-05-25 評価=3.50)
(安藤)「あなたの意見は理屈が通っています。しかし、奥様の場合、自動車でもほかの乗客より危険な状況に置かれていたことを見逃してはなりません」 - IA03486 (2023-05-26 評価=3.50)
(安藤)「あなたは筆子さんに安全だから一番前の方へ乗れと指示されましたね。ばい菌をなるべく吸わないようにするには、風上がいいし、震動も少ない、という理由で」 - IA03487 (2023-05-26 評価=3.50)
(安藤)「しかし、実際には衝突の際に怪我をする確率は、一番前の席の方が高い。さきほどのあなたの言葉と矛盾していますね。現に衝突で怪我をしたのは奥様だけでした」 - IA03488 (2023-05-28 評価=3.50)
(安藤)「ひどい衝突なら命を取られたかも知れない。あなたは偶然の危険の中へ奥様を置き、必然の危険の中へ奥様を追い込んだ。元々奥様は感冒には免疫を持っていた筈です」 - IA03489 (2023-05-28 評価=3.50)
(湯河)「妻は2回感冒にかかっていますから免疫はアテにならないと思いました。それに衝突は偶然です。偶然の必然なんて稀なことで、必然(必ず)命を失う訳ではないでしょう」 - IA03490 (2023-05-29 評価=3.50)
(安藤)「偶然のひどい衝突の場合必ず命を取られると言えましょう。ところで偶然と必然の研究を人間の心理と結び付けると、論理が単純でなくなる事にお気付きになりませんか」 - IA03491 (2023-05-29 評価=3.50)
(安藤)「犯罪心理の事ですよ。ある人を間接な方法で死亡させるため、目に付かない必然を含む偶然の危険へ、その人を露出させる。あなたの行為と外形的に一致していませんか」 - IA03492 (2023-06-01 評価=3.50)
(湯河)「30回自動車で往復させただけで、人の命が奪えますか?」(安藤)「それだけなら無理ですが、無数の危険な偶然を積み重ねて、その焦点に人を引き入れるとどうでしょう」 - IA03493 (2023-06-01 評価=4.00)
(安藤)「一人の男が心臓の弱い妻を殺そうと考えた、とします。その男は偶然的危険を増大させるために、飲酒や喫煙の習慣を妻に付けさせて、より心臓が悪くなるように仕向けた」 - IA03494 (2023-06-02 評価=3.50)
(安藤)「彼女は愛煙家になってしまいました。さらに毎朝冷水浴をさせて心臓が悪くなるようしむけ、その上でチフス菌のいそうなものを細君に食べさせたのです」 - IA03495 (2023-06-02 評価=3.50)
(安藤)「細君には生水を飲ませ、刺身、生の牡蠣などチフス菌の多そうなものを食べさせました。彼女はパラチフスになりましたが、致死率の高いチフスにはかかりませんでした」 - IA03496 (2023-06-03 評価=3.50)
(安藤)「悪性の感冒流行は願ってもない機会でした。強い過酸化水素水のうがいで咽喉カタルにさせたほか、感冒の伯母を何度も見舞いに行かせて、感冒にかからせたのです」 - IA03497 (2023-06-03 評価=4.00)
(安藤)「その後も、免疫があるから付添人に適当だと言って、感冒で入院中の細君の実家の子供の付添人にさせたのです。結局、細君は感冒で肺炎にかかり重態になりました」 - IA03498 (2023-06-04 評価=4.00)
(安藤)「彼女は死にそうに思えましたが、助かってしまいました。そこで夫は、細君が寝る前に消す、ガスストーブを利用しようと考えました」 - IA03499 (2023-06-04 評価=3.50)
(安藤)「寝間着の長い裾がガス栓に触れるので、夫は栓に油を差しておきました。しかしその行動を、細君と仲のよい気転の利く女中に見られてしまいました」 - IA03500 (2023-06-05 評価=4.00)
(安藤)「細君は危うくガスで窒息しそうになりました。しかし原因は彼女の不注意のせいとされてしまいました。乗合自動車の失敗の後、彼は引っ越しを彼女に勧めました」 - IA03501 (2023-06-05 評価=3.50)
(安藤)「そして当時水が悪く、伝染病が絶えなかった大森近くへ引っ越しすると、池を作って蚊と蠅を発生させ、チフス患者を見舞わせたのです」