武芸の達人だが、人の良い浪人三沢伊兵衛。仕官先を探していた彼は、ある日藩の老職の目に留まる……。何度も映像化された、夫婦の絆を描く心温まる傑作
- IA05359 (2026-09-08 評価=4.00)
■1 安宿で三沢伊兵衛は寝ころび、妻のおたよは縫い物を続けていた。外は十五日も雨が降り続け、機嫌が悪いのか女のわめく声が聞こえていた - IA05360 (2026-09-10 評価=3.00)
女が自分の炊きかけの飯が盗まれた、とまだわめいている。街道筋の町はずれの安宿ではこんな騒ぎがよく起きる。長雨で旅芸人らの収入がとだえてしまうせいだ - IA05361 (2026-09-10 評価=4.00)
日陰のしょうばいをする三十過ぎの女は、立ち居が乱暴で口が悪く、同宿者との折り合いが悪かった。だが煮炊きには困っていない様子だった - IA05362 (2026-09-12 評価=3.00)
がっしりした身体に柔和な顔をした伊兵衛は、女の叫びが辛辣なことに文句をつけた。妻もぬい物をしながら「みなさんももう少し親切にしてあげたらいいのに」と言った - IA05363 (2026-09-12 評価=3.00)
「説教節のじじい、おまえが盗んだだろ」という女の声が聞こえた。伊兵衛は妻の制止をふりきり、ふすまをあけて出ていった - IA05364 (2026-09-16 評価=4.00)
炉端にいた女は喚きたてていた。伊兵衛はやめるよう、穏やかに言ってみた。だが女は、卑しい稼業をしていても物を盗まれて黙っているわけにはいかない、と引かない - IA05365 (2026-09-16 評価=4.00)
伊兵衛は、間違いということもあるし、私がなんとかするから、と言って立ちあがった。そして外へ出かけると城下町のほうへ歩いていった - IA05366 (2026-09-17 評価=4.00)
■2 伊兵衛は四時間ほどで帰ると、続いて若者や小僧が米俵や野菜、魚、酒に薪・炭を運んできた。そして彼は同宿者たちに「なが雨の縁起直しに、手料理でひと口やりましょう」と言った - IA05367 (2026-09-17 評価=4.00)
同宿者から嘆息のような声が起こり、少し間をおいて、宿の中は活気で揺れあがった。炉にもかまどにも火が入って調理が始まり、笑い声が絶え間なく起こった。伊兵衛も準備に加わった - IA05369 (2026-09-18 評価=3.00)
伊兵衛は満足そうなかれらを眺めながら、嬉しそうに飲んでいた。三味線が持ち出され、唄が始まり、踊りだす者もいた。騒ぎの中から溜息が聞こえると、伊兵衛は眉をしかめて酒をあおった - IA05370 (2026-09-19 評価=4.00)
あの女が帰って来た。源さんの女房がみつけて、伊兵衛のふるまいなので姐さんも早くどうぞと言うと、説教節の爺さんが女に悪態をついた - IA05371 (2026-09-19 評価=4.00)
伊兵衛が爺さんをなだめ、女に「貴女もどうぞ」と誘うと、みんなもすすめた。源さんの女房が手を取って女をつれて来た - IA05372 (2026-09-21 評価=4.00)
女はすました顔で座り、伊兵衛が音頭をとると、また騒ぎが始まった。伊兵衛が妻の所に戻ると、おたよは日記を書いていたが「賭け試合をなさいましたのね」と怒った眼で言った - IA05373 (2026-09-21 評価=3.00)
伊兵衛は「しました」と認めておじぎをした。おたよは「しない約束でしたわ」ととがめると、彼は「自分のためじゃないんです。みんな喜んでいるし」と言い訳をした - IA05374 (2026-09-22 評価=3.00)
■3 明くる朝、伊兵衛は宿から逃げだすためか、川にあゆ釣り出かけた。だが堤を下りて松林に入ると「もう七年になる」とつぶやいた。 - IA05375 (2026-09-22 評価=4.00)
彼の家は、松平壱岐守(いきのかみ)に仕え代々250石を取っていた。彼は幼い頃身体が弱かったが、寺に預けられてからは健康になり、気質も積極的になった - IA05376 (2026-09-23 評価=3.00)
学問も成果を出し、師範も相手にならない程武芸も上達し強くなった。だが、そのために主家を浪人しなければならなくなった。なぜなら彼の腕前は桁外れで、簡単に勝負に勝ってしまう - IA05377 (2026-09-23 評価=3.00)
簡単に勝敗が決まると、観ている人はしらけ、彼自身はてれた。相手はひっこみがつかず、彼自身も悪いことでもした気分になる - IA05378 (2026-09-24 評価=5.00)
そのために気まずくなり、ついにいとまを願い、仕官のために旅に出た。だが技量だめしで、その土地の定評のある者を簡単に負かしてしまうと、座がしらけて話がまとまらない


