屋根裏を行き来し他人を盗み見る男、郷田三郎。明智小五郎がその殺人トリックを解明する! 幾たびも映像化された江戸川乱歩の有名なミステリー作品
- IA01002 (2020-08-02 評価=3.50)
■一■ 江戸川乱歩が1925年に発表した、犯人側から描く倒叙形式のサスペンス・ミステリー。まず、主人公郷田(ごうだ)三郎のゆがんだ性格描写から始まります - IA01003 (2020-08-02 評価=4.00)
彼は遊びにも失望しただけでなく、女と酒にも生き甲斐を感じることができません。ともすれば、彼は死んでしまったほうがましだ、とも考えました - IA01004 (2020-08-02 評価=4.00)
親許から仕送りのある彼は生活には困らなかったので、頻繁に宿所を換えるようになりました。ちょっと旅に出ては、東京に戻るたびごとに下宿を換えたのです - IA01005 (2020-08-02 評価=4.50)
郷田三郎は東栄館という新築の下宿屋に移りました。また、彼は友人の紹介で素人探偵の明智小五郎と知り合いになり、「犯罪」に新しい興味を覚えます - IA01006 (2020-08-03 評価=4.20)
明智は三郎の病的な性格をに研究材料として興味を見出し、また、三郎は明智から魅力ある犯罪談を聞くことに底知れぬ魅力を感じていたのでした - IA01007 (2020-08-03 評価=4.33)
彼は犯罪に関する書物を毎日読みふけり、自分も物語の主人公のように目ざましい遊戯をしたい、と考えるようになりました。しかし、罪人にはなりたくありません - IA01009 (2020-08-03 評価=4.66)
通行人の後を尾行したり、暗号文をベンチに挟んだりしたほか、しばしば変装をして町をさまよいました。特に女装が彼の病癖を喜ばせました - IA01011 (2020-08-04 評価=4.33)
■二■ 彼が東栄館に移ったのは、明智と交際を結んで一年以上経ったころでした。その頃には、犯罪の真似事にも興味がなくなっていました - IA01012 (2020-08-04 評価=4.66)
彼は退屈のあまり、押し入れの上段に蒲団を敷いておいて、眠くなったらそこへ上がって寝ることにしたらどうだろう、と考えました - IA01013 (2020-08-04 評価=4.33)
彼は早速その晩から押し入れの中で寝始めました。目の上二尺(約60センチ)にある天井を眺める心持ちは、ちょっと異様な味わいがあります - IA01015 (2020-08-06 評価=4.33)
しかし、天井板の上には何かが乗っているようです。彼が思いきってはねのけてみると、上から何かが落ちて来ました - IA01016 (2020-08-06 評価=4.33)
落ちて来たのは小さな石で、天井裏に入る穴の天井板に鼠などが押し入らぬように重しをしていたのです。彼は天井裏に首を入れて、四方を見回しました - IA01017 (2020-08-06 評価=4.50)
天井裏には朝の事で、方々の隙間から細い光線が差し込んでおり、細長い下宿屋の屋根裏は棟木と梁が遠く連なっていて、まるで鍾乳洞の内部のようです - IA01018 (2020-08-07 評価=4.66)
その日から、彼の「屋根裏の散歩」が始まりました。新築なので屋根裏は汚れておらず、季節も春のことで、暑くも寒くもありません - IA01019 (2020-08-07 評価=4.66)
■三■ 東栄館は中庭を囲んで四方に部屋が並び、出入り口が一方向にある枡形で、その気があればどの部屋にも自由に忍び込むことができる開放的な形状でした - IA01020 (2020-08-07 評価=4.66)
天井にはいたる所に隙間があり、他人の秘密をのぞき見することも勝手次第です。郷田三郎は、刺激の強い「犯罪の真似事」が出来ると思うと、嬉しくてたまりませんでした - IA01021 (2020-08-07 評価=4.66)
彼は、さも本物の犯罪人らしく身支度しました。濃い茶色のシャツとズボン下に、足袋、手袋を身につけ、手には懐中電灯を持ちました