夏目漱石の夢に登場する愛・希望・不安・恐怖を意識化した幻想の物語。孤独な文豪が100年後の読者を意識して執筆したと言われる連作ファンタジー作品
- IA01441 (2020-12-27 評価=5.00)
■第五夜(戦で捕虜となり女を待つ話)■ 大昔のこと、自分は軍を率いて戦ったが、生けどりになり敵将の前に引きすえられた - IA01442 (2020-12-27 評価=4.00)
大将は、死ぬか生きるかと聞き、自分が死ぬと答えると、大将は腰の剣をするりと抜きかけた。自分が右手を大将に向けて待てと合図をすると、大将は剣を鞘に収めた - IA01443 (2020-12-27 評価=4.00)
自分が死ぬ前に一目思う女に逢いたいと言うと、大将は夜が開けて鶏が鳴くまでなら待つと答えた。大将は腰をかけ、自分は草の上で女を待った - IA01444 (2020-12-28 評価=3.00)
女は白い裸馬に飛び乗ると、馬はかがり火を目がけて闇の中を飛ぶように走る。女は細い足でしきりなしに馬の腹を蹴り、長い髪は吹き流しのように尾をひいた - IA01446 (2020-12-29 評価=3.00)
■第六夜(仁王像を彫る話)■ 鎌倉時代の運慶が来て、護国寺で仁王像を刻んでいると評判になっている。行ってみると、なぜか自分同様、明治の人間が大勢見に来ていた - IA01447 (2020-12-29 評価=4.00)
見物人は運慶や仁王について勝手な噂話をしている。しかし運慶は評判を気にせず、鑿(のみ)と槌(つち)を動かし、仁王の顔のあたりを彫り抜いて行く - IA01448 (2020-12-29 評価=4.00)
運慶の服装は古くさく、なぜ彼が今生きているのか不思議だが、一生懸命彫っている。眺めていた若い男が感心して「彼は道具を自由自在に使いこなす境地に達している」と言った - IA01449 (2020-12-30 評価=5.00)
運慶が無遠慮に刀を入れると、怒り鼻が浮き上がる。自分が感心していると、若い男は「あの通りの眉や鼻が木の中に埋まっているのを、刀の力で掘り出すだけだ」と言う - IA01451 (2020-12-31 評価=3.00)
■第七夜(行き先不明の船に乗る男の不安)■ 大きな船に乗っている。朝、焼け火箸のような太陽が昇って帆柱の真上を通り、焼け火箸のようにじゅっと波の底に沈んでいく - IA01452 (2020-12-31 評価=3.00)
船の男に船が西に行くのか尋ねても、きちんと答えてはもらえない。「西へ行く日の、果ては東か…」などとはやしている。へさきでは水夫が帆綱をたぐっている - IA01453 (2020-12-31 評価=4.00)
心細い。自分はいっそ身を投げて死んでしまおうかと思った。乗客の一人の女が手摺りに寄りかかって泣いていた。その時、悲しいのは自分だけではないのだと気がついた - IA01454 (2021-01-02 評価=3.00)
死のうとさえ思っている私に、甲板の上で異人が金牛宮の七星(スバル)の話をする。サロンでピアノを弾いている女と歌を唄っている男も、自分達以外には頓着しない様子だ - IA01456 (2021-01-04 評価=4.00)
■第八夜(不思議な床屋の話)■ 席が六つほどの床屋に入り、鏡の前に腰をおろした。鏡を通して顔の後ろに窓が見え、人のいない帳場(勘定を払う場所)が見えた - IA01457 (2021-01-04 評価=3.00)
鏡ごしに見る窓を様々な人が通る。知り合いの庄太郎は女連れで、豆腐屋はらっぱを吹きながら通る。芸者はまだ化粧をしておらず、日本髪も整えていない - IA01458 (2021-01-04 評価=4.00)
白い着物を着た大きな男が後ろへ来て、自分の頭を眺めだした。自分が「物になるだろうか」と聞いても男は黙って髪を切り始めると「旦那は表の金魚売りを見たか」と尋ねた - IA01459 (2021-01-05 評価=3.00)
表では誰かが「危ねえ」といっている。自転車と人力車が衝突しかかったようだ。粟(あわ)餅屋が「餅やあ」と言いながら餅つきをしている音が聞こえる