夏目漱石の夢に登場する愛・希望・不安・恐怖を意識化した幻想の物語。孤独な文豪が100年後の読者を意識して執筆したと言われる連作ファンタジー作品
- IA01460 (2021-01-05 評価=4.00)
鏡の中を覗き込むと、帳場に浅黒い眉毛の濃い大柄な女が座っている。日本髪に着物を着て、立て膝のままとても早い速度で百枚の札の勘定をしている - IA01462 (2021-01-06 評価=3.00)
■第九夜(幕末悲話)■ 今にも戦が起こりそうな世、若い母と三つの子供がいる家がある。父は月の出ていない夜中に、草鞋をはき、黒い頭巾をかぶって、勝手口から出て行った - IA01463 (2021-01-06 評価=3.00)
父はそれきり帰って来なかった。母は毎日三つの子供に「御父様は、今に御帰り」と繰り返し教え、夜になると短刀を帯に差し、子供を背負って外へ出て行く - IA01464 (2021-01-06 評価=3.00)
母は、土塀の続く屋敷町や杉の木立を通って行く。さい銭箱の上に鈴の紐が下がり、八幡宮(はちまんぐう)という額がかかっている古い拝殿の階段下に出た - IA01466 (2021-01-07 評価=3.00)
子供が泣いても母は容易に立たない。夫の身の上を祈ると、今度は背中の子を欄干にくくりつけ、段を下りて二十間(約36メートル)の敷石を往復して御百度を踏む - IA01468 (2021-01-08 評価=3.00)
■第十夜(豚と格闘する話)■ 女にさらわれて七日目に戻った庄太郎は寝込んでいた。その日、庄太郎は水菓子屋の店先でパナマ帽を被り、往来を通る女の顔を眺めていたのだが…、 - IA01469 (2021-01-08 評価=4.00)
立派な服装の女が店先に立った。庄太郎はその女の着物の色と顔に感心し、籠詰めの水菓子を家まで持って行く事にしたのだが…、庄太郎はそれぎり帰って来なかった - IA01470 (2021-01-08 評価=5.00)
戻って来た庄太郎は、事情を語り始めた。その日、女と電車に乗った彼は電車を降りて歩き、絶壁の上に出た。すると女が飛び込め、さもないと豚が来て舐めるぞと脅したのだ - IA01471 (2021-01-09 評価=5.00)
庄太郎は恐怖で飛び込まずにいた。豚が鼻を鳴らして来たので、固いステッキで鼻づらを打つと谷底へ落ちた。気づくと数え切れぬ豚が向かって来ており、一匹づつ谷へ落とした