森鴎外の代表作「山椒大夫」は中世の説話を元にした、安寿(あんじゅ)と厨子王(ずしおう)姉弟の物語。その過酷な運命には誰もが涙を誘われるでしょう
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■■ 母を呼び続ける安寿と厨子王を宮崎は叱り、二人は抱き合って泣いた。こうして幾日か舟に明かし暮らし、宮崎は越中(富山)、能登(石川)、越前(福井)、若狭に立ち寄った - IA01522 (2021-02-01 評価=4.00)
安寿と厨子王はなかなか売れなかったが、丹後の由良(京都府)の港で、山椒大夫という手広く農業、猟、養蚕などを職人に作らせている金持ちに、高値で売ることができた - IA01523 (2021-02-01 評価=3.00)
■■ 大廈(おおいえ)の奥深い広間の分厚い敷物の上に山椒大夫が座り、二男・三男が並んでいる。安寿と厨子王は前へ引き立てられ、ただ目をみはっている - IA01524 (2021-02-01 評価=3.00)
大夫は「か細い童は何に使うてよいかわからぬ」と言ったが、三郎が「辞儀もせず、名のりもせぬしぶとい者どもじゃ。決まり通り初めは男は柴刈り、女が汐汲みをさせよ」と言った - IA01525 (2021-02-01 評価=2.50)
大夫はあざ笑い、姉に垣衣(しのぶぐさ)、弟に萱草(わすれぐさ)と名を付け、姉に汐汲み、弟に柴刈りを命じた。奴頭が灯火もない新参小屋に連れて行き、仕事の道具を渡した - IA01526 (2021-02-02 評価=3.00)
■■ 二人は汚いむしろをかぶって寝た。翌朝厨子王は調理場に行き、かれいけ(弁当箱)に昼食用の干し飯と、朝ご飯用の塩を入れて炊いだお粥に湯を二人分受け取った - IA01527 (2021-02-02 評価=3.00)
二人は相談して運命に任せる事にし、姉は浜辺へ向かった。厨子王は由良の麓から遠くない雑木林で柴を刈るのである。だが、柴の刈り方がわからず、ぼんやり時を過ごしていた - IA01528 (2021-02-02 評価=3.00)
日が昇ってから、麓へ降りる他の木こりが通りかかり、厨子王の作業がはかどっていないのを見て、柴の刈り方を教えてくれた。おかげでノルマの三荷を刈ることができた - IA01529 (2021-02-02 評価=2.00)
安寿が汐の汲み方が分からず困っていると、伊勢の二見が浦から買われて来た小萩という女子が教えながら一荷汲んでくれた。二人は昼食を食べながら姉妹の誓いをした - IA01530 (2021-02-03 評価=3.00)
■■ 十日経ち、小屋を出て別々の組に入る時、二人は死んでも別れぬと反発した。大夫は「引きずって行け」と指示したが、息子の二郎が「死んでは損。私が計らいます」と言った - IA01531 (2021-02-03 評価=3.50)
大夫が「勝手にせよ」と言ったので、二郎は小屋を掛けて二人をいっしょに置き、二人に「大きゅうなる日を待て」と諭した。だがある日、三郎が二人が話をしているのを聞いた - IA01532 (2021-02-03 評価=3.00)
安寿が「厨子王だけで筑紫に行き、お父さまに会ってから佐渡へお母さまを迎えに行くといい」と話した時、三郎が中に入って来た。「逃亡の企ては焼き印がこの邸の掟」 - IA01533 (2021-02-03 評価=4.00)
二人は真っ青になり、「あれは嘘だ」と一生懸命に弁解した。だが、三郎は「嘘なら嘘でいい。二人が一緒にいて何を話しているのか、おれは確かに聞いた」と言って出て行った - IA01534 (2021-02-04 評価=3.50)
朝方、二人が目をさますと枕もとに三郎が立っており、二人を引き立てて邸の広間に連れて行った。真っ赤に火のおこった炉の前にしとねを重ねて山椒大夫がすわっていた - IA01535 (2021-02-04 評価=4.00)
三郎は焼けた火箸を抜き出し、厨子王の抵抗を蹴倒して安寿の額に当てた。安寿の悲鳴が響く中、厨子王の額にも火箸を当てた。そして、三郎は二人を凍った土の上に放り出した - IA01536 (2021-02-04 評価=3.50)
痛みに耐えながら、二人は小屋に辿り着き倒れ込んだ。安寿が守り袋から仏像を出して枕もとに据えると、額の痛みも創も消えた。はっと目が覚めると、それは二人の夢だった - IA01537 (2021-02-05 評価=2.00)
■■ 恐ろしい夢を見てから、安寿の様子はひどく変わって来た。顔は引き締まり、物を言わなくなった。厨子王は前より一層淋しく感じるようになった - IA01538 (2021-02-05 評価=3.00)
年が暮れかかると、奴も婢も家の中で働くことになり、安寿は糸を紡ぎ、厨子王は藁を打った。年が明けても晴れがましいことは何もなく、奴の小屋でいさかいが起こるだけだ - IA01540 (2021-02-07 評価=2.00)
■■ 水が温み、草が萌える頃、屋外の仕事が始まる前日、二郎が小屋を見回りに来た。すると、安寿が「弟と同じところで仕事がしたい」と訴えた。蒼ざめた顔に目が輝いている