森鴎外の代表作「山椒大夫」は中世の説話を元にした、安寿(あんじゅ)と厨子王(ずしおう)姉弟の物語。その過酷な運命には誰もが涙を誘われるでしょう
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越後の今津(新潟県の直江津)へ出る道を母・姉(14歳)・弟(12歳)・女中の一行が歩いていた。彼らのように笠や杖などを持つ、かいがいしい出で立ちをした旅人は珍しい - IA01502 (2021-01-26 評価=3.20)
道はよく乾き固まっていて歩きやすく、周囲の紅葉もきれいだ。姉娘が「早くお父さまのところに行きたい」と弟に言っている - IA01503 (2021-01-26 評価=3.00)
向こうから塩浜から帰る潮汲み女がやってきたので、女中が「この辺に旅の宿をする家はありませんか」と尋ねると「この辺には旅の人を留める所はありません」と答えた - IA01504 (2021-01-26 評価=3.00)
潮汲み女は「悪い人買いが立ち回っているらしく、国守が掟を定めたのです。そこらでいい所を見つけて野宿をなさるよりしかたがありますまい」と言った - IA01505 (2021-01-27 評価=3.00)
潮汲み女は「橋の下で休めば、大きい材木が立ててあるので、風も通さないでしょう。夜になったら藁やこもを持っていってあげましょう」と言った。一行は礼を言って別れた - IA01506 (2021-01-27 評価=3.00)
■■ 四人が応化の橋(直江津橋)のたもとに来ると、潮汲み女が言った通り高札に掟が書かれていた。彼らは河原に降り、石垣に立てかけてある材木の下へくぐって入った - IA01507 (2021-01-27 評価=3.00)
一行は材木が平らに横たわっている場所に入り、女中が着換えを出した。彼らは岩代の信夫郡(福島県)から来ていて、不自由に慣れているので、さほど苦にはしていない様子だ - IA01508 (2021-01-27 評価=3.00)
たき火ができないため、女中が塩浜の持ち主の家にお湯とわらなどをもらいに行く、と言って出て行った。子供らが菓子のおこしや乾した果物を食べていると、誰かが入ってきた - IA01509 (2021-01-28 評価=3.50)
骨組みのたくましい男は、材木の端に腰をかけて言った。「わしは山岡大夫という船乗りだ。国守の掟で宿を借りることのできない気の毒な旅人を救おう、と思い立った - IA01510 (2021-01-28 評価=3.00)
わしの家は街道を離れていて、こっそり人をとめる事ができる。饗応はせぬが芋がゆでも進ぜましょう」と男が独り言のように申し出た。母は志に感じ、申し出を受ける事にした - IA01511 (2021-01-28 評価=2.50)
男は早速案内しようとしたが、連れが湯をもらいに街道を引き返した事を告げると「男か女子か」と尋ね、女中と知ると待つ事にした。その時、男はなぜか喜びの影を見せた - IA01512 (2021-01-28 評価=3.33)
■■ 朝早い直江の浦で、山岡大夫が泊めた四人の旅人を舟に乗せていた。昨晩の事、母は大夫に夫が筑紫に赴任して帰らぬ為、覚束ない旅を始める事になった、と事情を話した - IA01513 (2021-01-29 評価=3.50)
母が大夫にこれから陸路と船路ととちらがよいか尋ねると、大夫はためらわずに船路を勧め、陸路には多くの難所があることを具体的に説明した - IA01514 (2021-01-29 評価=3.50)
大夫が船路を強く勧めたので、翌朝、主従四人をせき立てて家を出たのである。その時、大切な物は船頭に預けるものだから、母の金入れの袋を預かる、と言った - IA01515 (2021-01-29 評価=3.50)
母親は大夫の言うことを聴かなくてはならぬ勢いになった。どこか大夫に恐ろしいところがあったからである。四人は舟に乗ったものの、女中の姥竹には不安の色が消えなかった - IA01516 (2021-01-30 評価=4.00)
■■ 舟は人家のない岩陰の浜に着いた。大夫は既に来ていた越中宮崎(富山)と佐渡の船頭に指で「商品は四人」と合図した。船頭たちはそれぞれ五貫文、六貫文と指で合図を返した - IA01517 (2021-01-30 評価=3.50)
大夫は「二人ずつあの舟へお乗りなされ。どれも西国への便船じゃ」と言って子供二人は宮崎の舟、母と姥竹は佐渡の舟に乗せて自分の舟を出した。母親の銭の袋は返さなかった - IA01518 (2021-01-30 評価=3.33)
行き先は同じかと念を押す母に、佐渡は「いずれ同じ岸に着く」と答えて北へ、宮崎は南へ舟を出した。母は別れを悟り、姉に守本尊を、弟に護り刀を大切にするよう声をかけた - IA01519 (2021-01-30 評価=2.50)
子供らは「お母さま」と呼んでいたが、舟は遠ざかり声は聞こえなくなった。姥竹が船頭の脚にすがり、舟の行き先を変えるよう頼んだが、後ろざまに蹴られて船床に倒れた - IA01520 (2021-01-30 評価=3.00)
姥竹は身を起こすと「奥さま、ご免下さいまし」と海に飛び込む。母も上着を脱いで飛び込もうとしたが、船頭は「大事な代物じゃ」と引き綱で母をくるくる巻いて、舟を漕いだ