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夜長姫と耳男 (坂口安吾) 79分割入力文の数= 79 <<  1  2  3  4   >>

耳を切り取られた耳男(みみお)が無邪気で残酷な長者の娘夜長姫(よながひめ)の為に彫る仏像とは…。坂口安吾が独特の語り口でつづる傑作説話物語

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  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    346
    IA02440 (2022-02-12 評価=3.00)

    オレの親方はヒダ随一のタクミ。親方は死期の近づいた時、夜長の長者に招かれて「これはまだ二十の若者だが、他の弟子と技の劣らない奴だ」とオレをスイセンしてくれた
  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    339
    IA02441 (2022-02-13 評価=4.00)

    だが、その過分の言葉を聞いた兄弟子たちは、親方はモウロクしたと言いふらした。それを信じた長者の使者アナマロに、オレは長者の招きに応じるな、と言われて腹が立った

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    361
    IA02442 (2022-02-14 評価=4.00)

    オレが「オレの刻んだ仏像が不足な寺は天下にない。一心不乱にやればオレのイノチが寺や仏像に宿るだけだ」と叫ぶと、アナマロは思い直して、オレを長者の邸に連れていった
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    310
    IA02443 (2022-02-15 評価=3.00)

    アナマロは「キサマの品物がオメガネにかなう筈はないが、夜長姫サマの近くで暮らせるのは運がいい」と言った。オレはいらだったが、他のタクミと技を競う名誉を思い我慢した

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    400
    IA02444 (2022-02-15 評価=4.00)

    オレは「一心不乱に仕事をやりとげるだけだ」とアナマロに返した。翌日、邸で長者に会うと、彼は福の神のように太っていて、年を取って得た一粒種の夜長ヒメを溺愛していた
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    361
    IA02445 (2022-02-16 評価=4.00)

    オレは夜長ヒメを見つめた。親方が珍しい人や物に出会ったら目を放すな、と言っていたからだ。気おくれを押さえて見つめるときは、その人とともに水のようにすきとおるのだ

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    352
    IA02446 (2022-02-16 評価=4.00)

    夜長ヒメは十三で、身体は高く子供の香りがたちこめ、威厳はあるが怖ろしくはなかった。アナマロはオレを長者に師が認めたタクミだと紹介したが、長者はオレの耳に注目した
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    369
    IA02447 (2022-02-17 評価=4.00)

    「兎のような耳だ。しかし顔相は馬だな」という長者の言葉に、オレは逆上した。ヒメが「黒い顔が赤くなって馬そっくり」と言って侍女たちが笑い、オレは熱湯の釜のようになった

  • ファンタジー
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    369
    IA02448 (2022-02-17 評価=4.00)

    オレは処置に窮して立ちすくんだ。しばらくしてオレは思いがけなくふりむき、門の外まで走った。歩いて山の林にわけ入ると、日が暮れるまで滝の下に腰かけていた
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    407
    IA02449 (2022-02-18 評価=3.00)

    ★ オレに五六日おくれて青ガサが着き、また五六日遅れてフル釜の代わりに倅のチイサ釜が着いた。チイサ釜は父に劣らぬタクミと評判だったが、青ガサは高慢な男だった

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    399
    IA02450 (2022-02-18 評価=3.00)

    チイサ釜は鄭重だったが、挨拶以外しなかった。青ガサが「なぜ挨拶だけなんだ。人の口は必要を弁じるために孔があいているのだ」と言ったので、オレは青ガサが少し気に入った
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    366
    IA02451 (2022-02-19 評価=3.00)

    長者から仕事について「ヒメの十六の正月までにヒメにミロクボサツと納めるズシ(箱)がほしい」と正式に依頼があった。三人は受託し、挨拶後酒宴となったが、空席が三つあった

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    383
    IA02452 (2022-02-19 評価=3.00)

    アナマロが二人の女を連れてきた。長者はオレたちにその二人を引き合わせ「気が遠くなるほど遠くの泉の里でハタを織っていた美しい娘と、その母親だ」と紹介した
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    343
    IA02453 (2022-02-20 評価=4.00)

    二人はハタ織りの奴隷で、長者は、ヒメの気に入った仏像を造った者に娘のエナコをやると言った。男のタクミが奴隷に買われる例もある。いずれも必要な間しか大切にされない

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    322
    IA02454 (2022-02-20 評価=4.00)

    オレは驚愕し、可哀そうな女たちだと思った。だが、オレはヒメの気に入る仏像を造る気持ちはなく、怖ろしい馬の顔を化け物を造ることに精魂を傾けようと覚悟していた
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    341
    IA02455 (2022-02-21 評価=4.00)

    激しい怒りを覚え、オレがもらわない女に嘲(あざけ)りも湧いた。雑念を抑えようとエナコを見つめた。だがその目には、驚愕と怒りを抑えた代わりに嘲りが宿ってしまった

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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    332
    IA02456 (2022-02-21 評価=4.00)

    嘲りをエナコに向けるのは不当だが、しようがない。エナコは顔つきが変わり、オレと睨み合った。するとエナコは「この国では馬が仏像を造るのですね」と嫌みを言った
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    389
    IA02457 (2022-02-22 評価=4.00)

    オレが「お前の国では馬の代わりに女がハタを織るようだ。遠路ご苦労」と返すとエナコは立ち上がった。エナコはオレの背後で耳をつまむと、オレは耳に一撃を受け前にのめった

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    投稿 TypetrekJさん
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    329
    IA02458 (2022-02-22 評価=5.00)

    ふりむくとエナコは右手に懐剣を握っていて、オレの左肩が一面に血でぬれていた。耳の痛みに気づくと、エナコは「馬の耳ですよ」と言って、左手のオレの片耳を酒杯に落とした
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    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    357
    IA02459 (2022-02-23 評価=4.00)

    ★ それから六日過ぎ、三人は銘々小屋をたてた。オレが人々が怖れて近づかぬ場所を選ぶとアナマロが来てからかったので、仕事場をのぞけないように窓や戸口に仕掛けを施した