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風立ちぬ (堀辰雄) 143分割入力文の数= 143 <<   4  5  6  7  8   >>

美しい高原で病気の婚約者に付きそう私。残された短い日々を、二人はどうすれば幸せに送ることができるのか? 深い愛情を描く堀辰雄の名作

作家や目的で選ぶ

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    406
    IA03045 (2022-10-18 評価=5.00)

    「おれにはどうしても好い結末が思い浮かばない。おれ達が無駄に生きていたようにはしたくない。いっしょに考えてくれないか」私が言うと、彼女は不安そうな微笑を浮かべる
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    380
    IA03046 (2022-10-19 評価=5.00)

    「どんな事をお書きになったか知らないもの」と彼女。私は「そのうちに一つお前にも読んで聞かせるかな」と言った

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    416
    IA03047 (2022-10-19 評価=4.00)

    私は明かりを消して、枕元で彼女の手を取る。しばらくして、彼女は寝入ったふりをし出した。私も寝られそうもなかったが、自分の部屋に戻った
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    414
    IA03048 (2022-10-19 評価=4.00)

    11月26日、私はよく夜の明けかかる時分に目が覚めた。病人の顔は蒼白く、私は「可哀そうな奴だなあ」と口癖のように呟いて、裏の林の中に出かけた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    392
    IA03049 (2022-10-19 評価=4.00)

    私は、林の中であれこれ考え事をしていた。曙の光が届くころ、サナトリウムに引き返すと、目を覚ましていた節子は物憂げそうに蒼い顔をしていた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    423
    IA03050 (2022-10-20 評価=5.00)

    看護婦長が、けさ私の知らない間に節子が少量の喀血をした事を伝えた。付き添い看護婦が来ることになり、私は隣の病室に引き移ることになった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    384
    IA03051 (2022-10-20 評価=5.00)

    11月28日、しばらく別々に暮らそう、と言い含めてはいたが、こんな不安な状況になるとそれも出来ない。私は二三時間おきに隣の病室に行き、枕もとにしばらく座る
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    438
    IA03052 (2022-10-20 評価=5.00)

    彼女はときおり、ちょっときまりの悪そうな微笑み方をして見せる。不安なせいか、彼女は私が代わりに父親に手紙を出すのも拒んだ

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    438
    IA03053 (2022-10-20 評価=4.00)

    12月1日、最近、蛾が窓にぶつかって傷つきながらも、生を求めてやまないようにもがきながら死んだ
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    367
    IA03054 (2022-10-21 評価=4.00)

    12月5日、夕方二人きりでいる時、病人が不意に「あら、お父様」とかすかに叫んだ。いつになく目が輝いている

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    375
    IA03055 (2022-10-21 評価=5.00)

    「あの低い山の、左端に日のあたった所、いま時分になると、お父様の横顔にそっくりな影がいつも出来るの」と、彼女は指さして言った
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    421
    IA03056 (2022-10-21 評価=4.00)

    こんな影にまで、彼女は父を求めていたのだろうか? 「家に帰りたい?」と私が口にすると「ええ、なんだか。……御免なさいね。でも、こんな気持ち、じき直るわ」と答えた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    440
    IA03057 (2022-10-21 評価=5.00)

    彼女が両手で顔を押さえている。恐怖が私を襲った。彼女の手を顔からよけると、額も目も口元も何一つ変わっていなかった。怯え切った私は、まる子供のようだった
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    368
    IA03058 (2022-10-22 評価=5.00)

    ■死のかげの谷 1936年12月1日、三年半ぶりの村は雪に埋まっていた。私は幸福の谷と呼ばれる谷に借りたやもめ暮らしの小屋に、炊事の世話をしてくれる姉弟と共に向かった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    383
    IA03059 (2022-10-22 評価=4.00)

    人けの絶えた淋しい谷のどこが幸福の谷なのだろう。死のかげの谷、のほうが似合いそうだ。ヴェランダの付いた木の皮の屋根の小屋に着くと、周囲には動物の足跡が残っていた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    325
    IA03060 (2022-10-22 評価=4.00)

    私は、姉娘が小屋の片づけをする間、弟から足跡の動物たちを教えて貰っていた。私は周囲を眺め、弟が一人そりで帰ったあと、片づけの終わった小屋にはいった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    351
    IA03061 (2022-10-22 評価=4.00)

    中は粗末だが、悪い感じではなかった。食事をして村の娘を帰らせた後、私は暖炉のそばに卓子(テーブル)を引き寄せて、一年ぶりでこの手帳を開いた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    335
    IA03062 (2022-10-24 評価=5.00)

    12月2日、北の方の山が吹雪いているらしい。よく見えていた浅間山も、雪雲におおわれている。私は落ち着かない気持ちで一日を過ごした

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    359
    IA03063 (2022-10-24 評価=4.00)

    昼頃、暖炉のそばでぼんやり過ごした。一人で冷たい食事をすませると私の気持ちもいくぶん落ち着いてきた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    383
    IA03064 (2022-10-24 評価=5.00)

    去年のいま頃、雪の舞っている夜ふけのこと、私は、私達のいたサナトリウムの入り口に立って、電報で呼び寄せたお前の父の来るのを待っていた。真夜中近く父は着いた