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風立ちぬ (堀辰雄) 143分割入力文の数= 143 <<   2  3  4  5  6   >>

美しい高原で病気の婚約者に付きそう私。残された短い日々を、二人はどうすれば幸せに送ることができるのか? 深い愛情を描く堀辰雄の名作

作家や目的で選ぶ

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    356
    IA03005 (2022-10-07 評価=5.00)

    病人の頬が熱で薔薇色になると、父は自分で納得したいのか「顔色がいい」と繰り返していた。二人で菓子箱などを拡げて楽しそうだった
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    354
    IA03006 (2022-10-07 評価=5.00)

    二人は、私の知らない馴染みの人々の話をしていた。短時間、私達が二人きりになった時、私がからかうように「薔薇色の少女みたいだよ」と言うと、彼女は照れて顔を隠した

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    337
    IA03007 (2022-10-07 評価=5.00)

    *** 父は二日滞在して帰ったが、その間この療養所は彼女の身体に向いていないのではないか、と語った。私は。今年の夏はどこも気候が悪かったから…と答えた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    342
    IA03008 (2022-10-07 評価=5.00)

    自分も一緒にいるから、彼女がいられるだけ滞在させてはどうかと父親に提言すると、彼は感謝しながらも、病人にばかり構わず、少しは仕事もしなさい、と釘を刺した

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    366
    IA03009 (2022-10-08 評価=5.00)

    夕方、停車場まで父を見送りに行った。帰ると、病人が激しい咳にむせっていた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    425
    IA03010 (2022-10-08 評価=5.00)

    私が看護婦を呼ぶと、病人は彼女に両手で支えられて、いくぶん楽そうな姿勢をとった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    386
    IA03011 (2022-10-08 評価=5.00)

    咳の発作はおさまったが、看護婦は私に血痰があった、と耳打ちした
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    381
    IA03012 (2022-10-09 評価=5.00)

    *** 絶対安静の日々が続き、彼女が犠牲にしていたものが目に見えてきた。彼女は細心に続けてきた私との生活を、軽はずみで壊したと思い、悔いている様子だった

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    373
    IA03013 (2022-10-09 評価=5.00)

    死の床になるかも知れぬベッドの上で、病人に犠牲を強いて、私達が味わっている生の快楽――それは私達を本当に満足させるものだろうか?
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    431
    IA03014 (2022-10-09 評価=5.00)

    一週間ばかりで、病人はベッドの中からよみがえった。「お父さんが来ても、あんなに興奮しない方がいい」という私の揶揄(やゆ)の言葉を彼女は素直に受け入れた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    363
    IA03015 (2022-10-09 評価=4.00)

    私達には、肉体的にも精神的にも危機を切り抜けた、と思えた。そこで、私はある晩、とうとう彼女に「僕はこれから仕事でもしようかと考えているのさ」と話した
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    395
    IA03016 (2022-10-10 評価=5.00)

    「その方がいい。私のことばかり考えないで…」と彼女は言った。「いや、お前のことをもっと考えて、お前のことを小説に書こうと思うんだ」と私は説明した

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    431
    IA03017 (2022-10-10 評価=5.00)

    「私のことならどうでもお好きなようにお書きなさいな」私が彼女の言葉を率直に受け取ると「すこしは散歩でもしていらっしゃらない?」と言った
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    414
    IA03018 (2022-10-10 評価=5.00)

    *** 森を出ると、八ヶ岳の山麓一帯と、サナトリウムの建物が見えた。私はその建物で多数の病人達に取り囲まれながら、過ごしている私達の生活の異様さを考えた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    328
    IA03019 (2022-10-10 評価=4.00)

    私は制作欲に湧き立ち、私達の奇妙な日々を異常にパセティック(哀れ)で物静かな物語に置き換え出した。私は節子から離れてはいたが、絶えず彼女に話しかけ、答を聞いた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    412
    IA03020 (2022-10-11 評価=4.00)

    ストーリーは勝手に展開して、病める女主人公のもの悲しい死の物語になっていった。だが彼等が得ようとする幸福が完全に得られたとしても、彼等は満足し得るのか?

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    397
    IA03021 (2022-10-11 評価=5.00)

    娘は誠実に介抱してくれた男に感謝して死に、男は自分達のささやかな幸福を信ずる、という物語の結末が見えた。だが死に瀕した娘を思うと、私は恐怖と羞恥に襲われた
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    366
    IA03022 (2022-10-11 評価=4.00)

    節子の寂しそうな姿を思い、私は急いで山道を下りた。彼女はいつものようにベッドの上で、髪の先を手でいじりながら、悲しげな目つきで空(くう)を見つめていた

  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    334
    IA03023 (2022-10-11 評価=4.00)

    私がバルコンから入ると、彼女は「どこへ行っていらしたの?」と訊いた。私は無雑作に真正面に見える遠い森の方を指さした
  • 青春・恋愛
    投稿 TypetrekJさん
    文字数
    418
    IA03024 (2022-10-12 評価=5.00)

    「いまの生活に満足している? いまのような生活はおれの気まぐれのような気がして…」と言いかけると、彼女は私をさえぎり「そんなことを仰るのがあなたの気まぐれ」と返した