人と異なる感性を持つために、自堕落とも思われる人生を歩んでいく主人公、大庭葉蔵。作者自身の私小説とも目される日本文学史に輝く大ベストセラー
- IA00516 (2019-12-09 評価=4.00)
一日一本のつもりが、四本になった頃には、自分はもうそれが無ければ、仕事が出来ないようになっていました。自分はもうかなりの中毒患者になったような気がしました - IA00517 (2019-12-09 評価=3.50)
自分がお願いすると、薬屋の奥さんは「中毒になっても知りませんよ」と言いながら、薬を棚から出しました。自分はモルヒネを注射すると元気になり、仕事がはかどるのです - IA00518 (2019-12-10 評価=4.00)
自分は完全な中毒患者になっていました。深夜、薬屋の戸をたたいた事もありました。不具の奥さんと醜関係さえ結びました。薬代の借りがおそろしいほどの額にのぼりました - IA00519 (2019-12-10 評価=4.00)
自分は、故郷の父あてに長い手紙を書いて、自分の実情一さいを(女の事は除き)告白すると、ヒラメが堀木を連れてあらわれ、森の中の大きな病院に連れていかれたのです - IA00520 (2019-12-10 評価=3.50)
ヨシ子が着換えの衣類の風呂敷包みを自分に手渡し、一緒に注射器と使い残りのあの薬品を差し出しました。自分は「もう要らない」と、実に珍しく拒否したのです - IA00521 (2019-12-10 評価=4.00)
若い医師に案内せられ、いれられた病棟は脳病院(精神病院)でした。これで、自分は狂人、いや廃人とみなされる事でしょう。もはや、自分は、完全に、人間で無くなりました - IA00522 (2019-12-12 評価=4.00)
三カ月後、故郷の長兄が引き取りにやって来て、父が先月末になくなったことを伝え、田舎での療養生活を勧めました。そこで自分は東北の温泉地の茅屋に移りました - IA00523 (2019-12-12 評価=4.00)
それから三年と少し、自分はことし、二十七になります。テツという老女中に数度へんな犯され方をして、病気のほうは一進一退。白髪が増え、四十以上に見られます - IA00524 (2019-12-27 評価=4.00)
■あとがき■ この手記を書いた狂人を、私は、直接には知らないが、京橋のマダムは見たことがある。ことしの二月、私は千葉県船橋市の友人をたずねた - IA00525 (2019-12-27 評価=4.00)
偶然入った船橋の喫茶店で、京橋のマダムと再会、彼女は「小説の材料になるかも知れません」と、葉ちゃんの三冊のノートブックと三葉の写真を私に託した - IA00526 (2019-12-27 評価=4.00)
私は女子大の先生をしている友人の家に行き、わずかなお酒を酌み交わし、泊めてもらう事にして、朝まで一睡もせずに、ノートに読みふけった - IA00527 (2019-12-27 評価=4.00)
私はれいの喫茶店に立ち寄り、そのひとのことを尋ねると、マダムは「私たちの知っている葉ちゃんは、とても素直で、よく気がきいて、神様みたいないい子でした」と話した