舞台はパリ。モルグ街で発生した女性惨殺事件を、友人デュパンが鋭い分析力で推理する。史上初の本格推理小説としても有名な、ポーの代表作
- IA02601 (2022-04-26 評価=4.00)
(続き)「鎧戸は一枚扉で半分が格子造りだ。幅が広く手もかけやすいし、避雷針に手が届くんだ。警察はこっちから逃げたはずはないと考えて、ざっとしか調べなかったのだろう」 - IA02602 (2022-04-27 評価=5.00)
(続き)「避雷針の電線から60センチ手をのばし、格子細工を掴んで壁を蹴れば、鎧戸がしまって窓から部屋に跳びこめる。ただ、こんな離れわざには異常な敏捷さが必要だ - IA02603 (2022-04-27 評価=4.00)
デュパンは「僕の目的は真実だけだ。君には並外れた活動力と、あの特異な鋭い声とを、考えてもらいたい」と言った。答がわかりそうな気はしたものの、わからなかった - IA02604 (2022-04-27 評価=5.00)
友は話をつづけた。「僕は入る手段を示したが、もちろん、同じ方法で出たことを暗示している。さあ、次に衣類だ。盗まれていたという話だが、これは単なる推測だ」 - IA02605 (2022-04-28 評価=5.00)
(続き)「一番いい衣服は残っているし、金貨もほぼ全額そのままだ。君には、金を渡したのは家の前、という銀行家の証言と、金目当てが動機という先入観は捨ててほしい」 - IA02606 (2022-04-28 評価=4.00)
(続き)「金目当てなら、犯人は金を捨てて逃げた馬鹿者だ。そこで今度は特異な声、並外れた敏捷さ、殺人の残忍さ、動機不明という事実を心にとどめて、凶行を見てみよう」 - IA02607 (2022-04-28 評価=5.00)
(続き)「殺された娘は頭を下に煙突に突き上げられている。しかも引き下ろすのに四五人も力を合わせなければならなかった。炉の上には人間のふさふさした髪の毛の束もあった」 - IA02608 (2022-04-29 評価=5.00)
(続き)「束の根本には頭皮の肉がついていた。さらに、ただの剃刀で老夫人の頭を胴体から離すほどの、獣的な残忍性。それに、夫人の打撲傷は中庭の敷石でできたものだ」 - IA02609 (2022-04-29 評価=5.00)
(続き)「つまり被害者は寝台側の窓から落ちたのだ。さあ、乱雑さ、敏捷さ、超人間的な力、獣的残忍性、動機なき惨殺、聞きとれない鋭い声。これらを結ぶ犯人像は?」 - IA02610 (2022-04-29 評価=5.00)
「精神病院を逃げた気違いだね」私が答えると「見当違いじゃないが、声が聞きとれないのも変だ。それに、これが夫人が握りしめていた狂人の髪の毛だよ」と彼は毛の束を見せた - IA02611 (2022-04-30 評価=5.00)
私には人間の髪の毛とは思えなかった。さらに彼は手書きの見取り図を見せ「これは娘の咽喉の『深い指と爪の痕』の模写だ。君の指をあててみたまえ」と言った - IA02612 (2022-04-30 評価=5.00)
指の痕は巨大で、人間のものではなかった。デュパンが博物書のオランウータンの記事を見せたので、私はその巨大さや非常な膂力、残忍性などから殺人が凄惨な理由を悟った - IA02613 (2022-04-30 評価=5.00)
指の記述は図と一致し、赤みのある黄色い毛も博物書の獣と似ていた。彼は「荒々しい声は、たしなめる声か諫める声、と言っているがもっともなんだ」と言った - IA02614 (2022-05-01 評価=5.00)
(続き)「凶行には加わっていないフランス人の男が居あわせた。男はオランウータンに逃げられ、後を追って部屋に入ったが、騒ぎのため捕らえられなかった、と推測する」 - IA02615 (2022-05-01 評価=4.00)
彼は「昨晩僕は新聞広告を頼んでおいた。きっとその男はここへ来るだろう」と言って「オランウータン捕獲。所有者のマルタ島船舶船員はこの住所へ」と書かれた新聞広告を見せた - IA02616 (2022-05-01 評価=4.00)
私が不思議に思い尋ねると、彼はリボンを見せ「避雷針の下で拾ったもので、脂じみや結び方がマルタ人の船乗りを思わせる。船員でないとしても、大した影響はない」と言った - IA02617 (2022-05-02 評価=5.00)
(続き)「そのフランス人は殺人には無関係で、オランウータンは値打ちものだ。警察は途方に暮れているし、凶行の現場からも離れている。罪には巻き込まれないと考えるだろう」 - IA02618 (2022-05-02 評価=5.00)
「広告主はおれが所有者と知っており、大きな値打ち物を受けとらなかったらかえって疑われる。男はそうも考えるだろう」とデュパンが言うと、誰かが階段をのぼってきた - IA02619 (2022-05-02 評価=5.00)
男が部屋の扉を叩き、デュパンが迎え入れた。その大柄な男は、ヒゲもじゃの日焼けした水夫で、樫の棍棒をたずさえていた。言葉に多少訛りはあったが、パリ生まれと思われた - IA02620 (2022-05-03 評価=4.00)
「あのオランウータンは何歳位ですか?」との質問に、水夫はほっとして溜息をつき「四五歳でしょう」と答えた。その後デュパンは水夫に自分のものと証明できることを確認した。